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地球の近くにある系外惑星を探す

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180710

原文:Nature (2018-04-04) | doi: 10.1038/d41586-018-03354-7 | NASA’s next exoplanet hunter will seek worlds close to home

Alexandra Witze

NASAの新しい宇宙望遠鏡TESSは、地球の近くにある明るい恒星の周りを回る系外惑星を探す。

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NASA'S GODDARD SPACE FLIGHT CENTER

2009年の打ち上げ以来、数多くの観測結果をもたらしてきたNASAの系外惑星探索衛星ケプラー。これまでに知られている3700個以上の系外惑星のうち4分の3近くを発見しており、さらに数千個の系外惑星候補が確認を待っているが、NASAは2018年3月に、「あと数カ月でケプラーの燃料は枯渇するだろう」と発表している。

後継ミッションが惑星の発見数という意味でケプラー以上の功績を上げるのは容易ではないだろう。そこでNASAは、次の惑星探索ミッションでは異なるアプローチを採用した。「狭い範囲をより遠くまで」から「より近く、広範囲を」探索することにしたのだ。2018年4月18日NASAはトランジット系外惑星探索衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)の打ち上げに成功した。ミッションの総額は3億3700万ドル(約370億円)で、地球の近くにある20万個の恒星の周りを回る惑星の兆候を詳しく調べる。TESSが発見する惑星の数は、おそらくケプラーに比べて少ないが、より科学的価値の高い惑星が見つかりそうだ。

マサチューセッツ工科大学(MIT;米国ケンブリッジ)の天体物理学者でTESSの科学担当次長のSara Seagerは、「私たちは惑星の『数』より、『近くの恒星の周りを回っているという事実』の方に興味があります」と言う。

TESSが探す系外惑星は、地球から十分近いところにあって、天文学者が詳細に調べることのできるものである。チームの科学者たちは、TESSは地球の2倍以下の大きさの系外惑星を500個以上発見するだろうと見積もっている(P. W. Sullivan et al. Astrophys. J. 809, 77;2015)。これらの惑星から、今後数十年間のさらなる研究の基礎となる情報が得られるだろう。生命の兆候の探索もその1つだ。「系外惑星に関する全く新しい研究の始まりを目にすることになるでしょう」とSeagerは言う。

ケプラーもTESSも、空を走査して惑星によるトランジットを探す。トランジットとは、惑星が主星の手前を通過して一時的にその光を遮ることで、主星がわずかに暗くなる現象だ。ケプラーは、そのミッションのほとんどの期間、全天のわずか0.25%という狭い範囲を、地球から約920パーセク(3000光年)の彼方まで観測していた。この観測により、銀河系内の至る所に惑星があることが示された。NASAのゴダード宇宙飛行センター(米国メリーランド州グリーンベルト)の天体物理学者Elisa Quintanaは、「私たちは惑星がどこにでもあることを知ったのです」と言う。

隣人と出会う

これに対して、TESSが観測する距離は地球から90パーセク(約300光年)以内だが、範囲は全天の85%である。搭載された4台の広範囲カメラにより、TESSの視野はケプラーの20倍にまで広がった(「空を走査する」参照)。TESSは最初に南天を走査し、1年後からは北天に目を転じる。

空を走査する
NASAのTESS衛星は、2年間の系外惑星探索ミッションの間に20万個の恒星をモニターする。研究者は、TESSが地球の2倍以下の大きさの惑星500個を含む1600個以上の惑星を発見することを期待している。 | 拡大する

SOURCE: NASA/MIT

各半球の観察区画は、南黄極および北黄極(地球の公転面に垂直な2点)で重なることになる。これは意図的なものである。この領域は、2020年に打ち上げが予定されているNASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope;JWST)も常時観測することになっているからだ。JWSTの6.5mの主鏡により、系外惑星の大気の詳細な分光観測が可能になる予定であり、系外惑星探索以外の天文学研究分野からも高い需要があるだろう。MITの天体物理学者でTESSの主任研究者であるGeorge Rickerは、「JWSTの使用時間は非常に貴重なものになるでしょう」と言う。

TESSが面白そうな系外惑星候補を発見したら、欧州南天天文台ラ・シヤ天文台(チリ)の高精度視線速度系外惑星探査装置HARPS(High Accuracy Radial velocity Planet Searcher)や、オーストラリアのトゥウンバ近郊に建設が計画されている6基の0.7m望遠鏡からなるミネルヴァ・オーストレイリス(MINERVA-Australis)などの地上の天文台群が、さらなるデータ収集に乗り出す。ちなみにMINERVAはMINiature Exoplanet Radial Velocity Array(系外惑星の視線速度の小型観測装置)の頭字語で、Australisはラテン語で「南の」という意味である。サザンクイーンズランド大学(オーストラリア)の天文学者で、ミネルヴァ・オーストレイリスの研究チームを率いるRob Wittenmyerは、「必要とあらば、毎晩でも標的を観測する能力があります」と言う 。

これら地上に設置される望遠鏡は、TESSが発見した惑星の質量を推測し、その質量から惑星の組成、すなわち岩石か、氷か、ガスか、あるいはそれ以外のものからできているかを明らかにすることができるだろう。

全く新しい世界

最近の研究から、TESSが予想以上に多くの収穫をもたらす可能性が示唆されている。2018年になって、MITの天文学者Sarah Ballardは、低温で数の多いM型矮星と呼ばれるタイプの恒星の周りを回る惑星をTESSが何個発見できるかを再計算し、従来の予想の1.5倍に相当する約990個と見積もった(S. Ballard Preprint at arxiv.org/abs/1801.04949;2018)。発見される惑星の数が多ければ、天文学者はさまざまなタイプの系外惑星を比較できるようになり、例えば恒星のフレアが惑星の大気にどのような影響を及ぼしているか、あるいは、異なる年齢の恒星の周りにどのようなタイプの惑星があるかといったことが明らかになるだろう。

TESSには間もなく仲間ができる。欧州宇宙機関(ESA)が、2018年末までに系外惑星解析衛星CHEOPS(CHaracterising ExOPlanet Satellite)の打ち上げを計画しているからだ。CHEOPSは、地球の近くにある恒星の周りを回る既知の系外惑星のうち、地球よりわずかに大きいものからほぼ海王星サイズ(地球の3.9倍)のものまでの大きさを測定する。ESAは2020年代にさらに2つのミッションを計画している。1つは地球サイズの系外惑星によるトランジットと星震を調べるPLATO(PLAnetary Transits and Oscillations of stars)で、もう1つは赤外線により多数の系外惑星の大気を調べるARIEL(Atmospheric Remote‐sensing Infrared Exoplanet Large‐survey)だ。

ケプラーに残された時間はあとわずか。次世代の系外惑星探索ミッションは、まさにぎりぎりのタイミングで開始された。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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