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EUがネオニコチノイド系農薬の屋外使用を全面禁止へ

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180611

原文:Nature (2018-03-08) | doi: 10.1038/d41586-018-02639-1 | EU expected to vote on pesticide ban after major scientific review

Declan Butler

ネオニコチノイド系農薬がハチに悪影響を及ぼしているという、専門機関の大規模なリスク評価の結論を受け、EUは3種の農薬の屋外使用禁止を可決した。

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shene/Moment/Getty

EUの食品安全に関する専門機関が長らく待望されていたリスク評価を終え、論争の的となっていた3種類のネオニコチノイド系農薬が野生のハチやミツバチに重大な危険を及ぼしているとする結論を出した。欧州食品安全機関(EFSA;イタリア・パルマ)による今回の報告を受け、EU常任委員会は2018年4月27日、屋外で栽培される作物へのネオニコチノイド系農薬の使用を全面的に禁止する規制案を承認した。規制は欧州委員会によって導入され、年内にも全加盟国で施行される予定である。

EFSAの前回のリスク評価により農薬が及ぼすハチへの悪影響に対する懸念が生じた2013年、EUはハチを引きつけるヒマワリ、アブラナ、トウモロコシなどの作物へのネオニコチノイド系農薬3種の使用を禁止した。研究者たちはその後も農薬がハチに及ぼす影響に関する証拠を収集し続け、欧州委員会は2017年、温室内での農薬の使用は許可しつつ、屋外使用の全面的な禁止を提案した。欧州委員会の公衆衛生と食品安全に関する報道官であるAnca Păduraruは、EFSAによる最新のリスク評価は、この提案の科学的基礎を強化するものだと説明する。

ネオニコチノイド(単にネオニコと呼ばれることもある)は昆虫に対する毒性が強く、中枢神経系に作用して体を麻痺させ、死に至らしめる。植物の表面にとどまるタイプの農薬とは違い、ネオニコチノイド系農薬は根、茎、葉、花、花粉、花蜜など、植物全体に取り込まれる(2014年10月号「ネオニコチノイド系農薬は、もはや無視できない」、2015年7月号「ネオニコチノイド系農薬の危険性をめぐる議論は次の段階に」、2016年10月「ネオニコチノイド系農薬とハチ減少に新たな証拠」、2017年12月号「6大陸の蜂蜜からネオニコチノイド系農薬を検出」参照)。

EFSAによるリスク評価では、ハチの健康への懸念が特に大きい3種類のネオニコチノイド(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)について検討された。考慮された研究は1500以上に上り、今回のリスク評価に関連がある、これまでに発表された全ての科学文献の他、大学、化学企業、国家当局、非政府組織(NGO)、養蜂家や農家の組合からのデータも参照した。リスク評価の結果、3種類の農薬全てが、屋外でのあらゆる利用法につき、ハチに1種類以上の深刻な影響を及ぼすことが明らかになった。

EFSAは、餌を集めて飛び回るハチが、農薬を散布された野原や近隣の汚染された地域の花粉や花蜜、あるいは農薬で処理した種子を植え付ける際に発生する粉塵に残留する有害なレベルの農薬にさらされていることを明らかにした。また、より限定的な証拠に基づき、ネオニコチノイドが時に土壌に残留して蓄積し、そこに植えられる代々の作物や、餌を集めるハチに悪影響を及ぼす可能性もあると結論付けた。

EFSAの農薬部門長であるJosé Tarazonaは、「EFSAの助言はしばしばNGOや企業などの利害関係者に批判されますが、これはEFSAの助言が科学的に健全で公平であることの良い証拠です」と言う。一方、ネオニコチノイドを生産する世界的なバイオテクノロジー企業シンジェンタ社(Syngenta)の広報担当者は、EFSAの結論はあまりにも保守的だと批判し、「規制当局が作物防護製品に関する決定を行う際、重要なのは科学やデータですが、現行の、適切な過程を踏んで得られたデータや、公共の福祉に資しているというデータも重要ではないでしょうか。今回の報告に基づいてさらなる規制を行うのは不適切です」と言う。

EU加盟国は3種類のネオニコチノイド系農薬の屋外での使用の禁止に関する提案について2017年12月13日に投票を行う予定だったが、多くの国がEFSAのリスク評価が終わるのを待つべきだとしたこともあり、投票は延期されていた。

待望のリスク評価の結果報告は、2018年3月22・23日、欧州委員会の植物・動物・食品・飼料(PAFF)常任委員会の会合で行われた。そして4月27日、投票で規制案が可決されたのだ。「ハチの保護は、欧州委員会にとって重大な問題です。生物多様性、食料生産、環境の全般に関わってくるからです」とPăduraruは言う。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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