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脈動オーロラの原因を解明

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180536

原文:Nature (2018-02-15) | doi: 10.1038/d41586-018-01669-z | The origin of pulsating auroras

Allison N. Jaynes

「脈動オーロラ」は、地球大気中で発生する見事な光のショーだが、この現象は宇宙空間で起こっているプロセスに直接関係している。数十年に及ぶ研究の末、今回、脈動オーロラを作り出す一連の現象全体が観測され、その仕組みが詳細に確認された。

オーロラとも呼ばれる北極光と南極光は、夜空で見せる色と同じくらい、その形態も変化に富んでいる。ディスクリートオーロラは、パソコンのデスクトップやカレンダーの表紙を飾るような典型的なオーロラであり、その原因は地球表面から数千kmの高度にある。一方、脈動オーロラ(高緯度地方の高度約100kmに現れる大きさ10~100kmの斑点状のオーロラで、数秒から数十秒の周期で明滅する)は、地球から数万km離れた磁気圏(地球の磁場が支配的である領域)の赤道領域に原因がある。この数十年間、脈動オーロラの発生原因は、磁気圏の電子とコーラス波と呼ばれる電磁波が相互作用した結果、電子が磁力線に沿って地球大気に向かって高速で降下するためだとみられてきた1-3。東京大学大学院理学系研究科の笠原慧ら、東京大学、名古屋大学、大阪大学などの研究者からなる研究チームは、地上からの観測と、そこに磁力線でつながる探査衛星からの観測の両方を基に、このメカニズムを裏付ける直接的証拠をNature 2018年2月15日号337ページで報告した4

磁場は人間の目には見えないので、ある磁力線が地球上のどの点に達し、その磁力線が宇宙空間ではどこに存在しているかを予測すること(磁力線マッピングと呼ばれる)は、非常に難しい5。幸い、地球周辺で運動する電子は、こうした磁力線に沿って動く傾向にある。こうした電子がコーラス波と相互作用すると、電子は電離圏と呼ばれる上層大気へ差し向けられることがあり、電離圏でオーロラ光を作ることが多い。このため、私たちは、その磁力線のフットプリント(磁力線が地球の電離圏高度に達する点)を直ちに見ることができる。

さらに、宇宙のまさにその位置に観測プラットフォームがあれば、電子を地球大気へと進ませたコーラス波を検出すると同時に、コーラス波が引き起こした電子流量の変動を知ることができる。このとき重要なことは、地上からの観測と宇宙からの観測が適切な時間と場所で協力して行われるようにすることと、両方のプロセスを同時に調べられるほど観測装置を高感度・高分解能にすることだ。こうしたハードルを越えることは難しく、脈動オーロラ発生メカニズムの理論が作られた後も、このような観測は実現していなかった6,7

最初の課題は、宇宙空間に存在している電子を、その場所で必要な分解能で測定できる装置を用意することだ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2016年12月に打ち上げたジオスペース(地球近傍宇宙空間)探査衛星「あらせ」8は、まさにそうした電子検出器を搭載しており、この電子検出器は、磁力線に平行に近い速度を持つ電子を検出できるように設計されている。あらせは、コーラス波を検出する装置も搭載している。笠原らは、あらせからのデータを分析し、電子流量の変動と、それに密接に結び付いたコーラス波を明らかにした。

次の課題は、あらせの位置を通る磁力線が、どこで地面に達するかを決定することだった。現在の磁場モデルは、地球大気での磁力線フットプリントのおよその位置を割り出すことができる程度には高度化されていて、一般に、地磁気活動(磁気嵐)のレベルが低いときは、より正確だ。笠原らは、フットプリントの近くで対応する脈動オーロラのシグナル、つまり、電子流量の変動に調和するオーロラ光強度の変動を探した。彼らは、カナダ中央部に設置された全天カメラが2017年3月に記録したデータにそうしたシグナルを発見した9。このカメラは、上空の半球状の視界を白黒映像で記録する(笠原らの論文4図2を参照)。

笠原らのおかげで、私たちは初めて、宇宙の電子流量の変動、この変動の原因であるコーラス波、地上から観測したオーロラ光強度の変動、という脈動オーロラ発生プロセスの全体像を見ることができた(図1)。最後の部分は、ブラウン管テレビで映像を見ることにいくらか似ている。電離圏はスクリーンであり、その上に電子が投射される。これは単純な描像だが、電離圏はおそらく入ってくるシグナルを変化させる、ということに研究者たちは気付いている。その詳細は、間違いなく、今後の研究で詳しく調べられるだろう。

図1 脈動オーロラの発生機構
脈動オーロラは、地球大気中で発生する、明滅する斑点状のオーロラだ。笠原らは、脈動オーロラが発生する仕組みを裏付ける証拠を報告した4。電子は、磁気圏と呼ばれる地球を取り巻く領域では地球の磁場にトラップされ、磁力線に沿って運動する(赤い矢印)。こうした電子が、磁気圏の赤道領域で生成されるコーラス波と呼ばれる電磁波と相互作用すると、地球の大気へ差し向けられることがあり、電子は地球大気中でオーロラ光を作る。笠原らは、対応する磁力線上に位置した探査衛星「あらせ」を使って8、コーラス波と電子の相互作用を検出した。 | 拡大する

笠原らは今回、宇宙の電子変動とコーラス波を、地上の全天カメラが観測した脈動オーロラシグナルと関連付ける分析を行った。この分析は、大気中の磁力線フットプリントの正確な位置を明らかにした。この方法は、磁場モデルのフットプリントの位置と観測された位置を比較することにより、現在の磁場モデルを検証し、さらに改善できる素晴らしい可能性を秘めている。将来の磁力線マッピングではおそらく、同様の方法を磁場トポロジー(磁力線の構造と結合)の解明にも用いるようになるだろう。

しかし、留意すべき点がある。脈動オーロラのシグナルを観測して測定するには空が晴れていることが必要だ。このため、地上の天気に左右される。また、コーラス波はさまざまな周波数の成分を含んでいて、各成分は磁気圏電子のエネルギーに依存してさまざまなやり方で電子と相互作用する。これは、どの電子が地球の大気へ進むかに影響する。こうした詳細は、地磁気活動と直接的に関連するが、まだ完全に定量化されてはいない。謎の多い脈動オーロラには、これからなすべき研究がまだたくさんある。

(翻訳:新庄直樹)

Allison N. Jaynesは、アイオワ大学(米国アイオワシティ)に所属。

参考文献

  1. McEwen, D. J., Yee, E., Whalen, B. A. & Yau, A. W. Can. J. Phys. 59, 1106–1115 (1981).
  2. Nishimura, Y. et al. J. Geophys. Res. Space Phys. 116, A11221 (2011).
  3. Jaynes, A. N. et al. J. Geophys. Res. Space Phys. 118, 4884–4894 (2013).
  4. Kasahara, S. et al. Nature 554, 337–340 (2018).
  5. Pulkkinen, T. I. & Tsyganenko, N. A. J. Geophys. Res. 101, 27431–27442 (1996).
  6. Coroniti, F. V. & Kennel, C. F. J. Geophys. Res. 75, 1279–1289 (1970).
  7. Davidson, G. T. J. Geophys. Res. 84, 6517–6523 (1979).
  8. Miyoshi, Y. et al. J. Phys. Conf. Ser. 869, 012095 (2017).
  9. Mende, S. et al. Space Sci. Rev. 141, 357–387 (2008).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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