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フェイクニュースは速く広く伝わる

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180507

原文:Nature (2018-03-08) | doi: 10.1038/d41586-018-02934-x | ‘News’ spreads faster and more widely when it’s false

Philip Ball

ツイッター上の情報を分析した研究から、虚偽のニュースは正しいニュースよりリツイートされやすいことが明らかとなった。

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NurPhoto/Getty

300万人のツイッターユーザーの間で流布したニュース項目12万6000件を分析したところ、フェイク(虚偽の)ニュースは正しいニュースよりも速く、広く拡散することが明らかとなった。この結果は3月9日号のScienceに掲載された1。マサチューセッツ工科大学(MIT;米国ケンブリッジ)の社会科学者Dean Ecklesは、今回の研究には参加していないが、「この論文は、ソーシャルメディア上で拡散する正しい情報と偽の情報について、これまでで最も包括的に記述した論文だと言えます」と評価する。

デマ(demagogie;意図的に発信された虚偽情報)やガセ(根拠のない噂話やうそ)は古くからあるが、ソーシャルメディアの時代に入り、その拡散が大きな問題となっている。例えば、2016年の米国大統領選挙の際には、ローマ法王フランシスコがドナルド・トランプ候補への支援を表明したなどの虚偽の情報がフェイスブックやツイッター上で増幅され、選挙の結果に影響を与えたと考えられている。

米国大統領選挙におけるドナルド・トランプの予想外の勝利や、同じく2016年に実施された英国のEU離脱の是非を問う国民投票などに虚偽の情報が果たした役割を巡っては激しい論争がある。Science3月9日号に論文を発表したMITのSinan Aralらは、答えの一部はフェイクニュースの伝わり方の理解にかかっていると言う。

彼らは、ツイッター上で拡散したニュースを、信用できる6つのファクトチェック(事実検証)機関の情報と照らし合わせて「真実」と「虚偽」に分類するという方法で、2006年から2017年までに300万人のツイッターユーザーの間で拡散した12万6000件のニュース項目を調査した。

分析の結果、6つのファクトチェック機関の間でニュースの真偽の判定は相互に95〜98%一致していたが、このうち正しいと思われるニュースは、虚偽のニュースに比べて拡散するのが遅く、到達した人数はより少ないことが明らかになった。

正しいニュースは最も人気のあるものでも1000人以上に到達することがめったになかったのに対し、虚偽のニュースの上位1%は1000~10万人に到達していた。また、虚偽のニュースが1500人以上に到達するのに要した時間は正しいニュースのわずか6分の1だった。さらに、情報がリツイートされる見込みについてのモデルによれば、虚偽のニュースがリツイートされる見込みは正しいニュースより70%も高かった。

なお、ツイッター上で自動的に投稿を行う「ボット」の存在がニュースの伝わり方を乱している可能性が疑われるため、Aralのチームはソフトウエアを使ってツイッター上の「ボット」アカウントを特定した。しかし、ボットのデータを除去しても、ボットではなく人間が作り出すフェイクニュースはやはり正しいニュースよりも速く伝わっていて、フェイクニュースが伝わりやすい理由が人間の行動にあることが示された。

その理由を解明するため、研究者たちはツイートの「目新しさ(novelty)」を数量化し、ランダムに選択したツイートの中で虚偽のニュース項目の目新しさが突出していることを明らかにした。ツイートに含まれる言葉を分析すると、虚偽のニュースが恐怖、嫌悪、驚きといった感情を植え付けるようなものであるのに対し、真実のニュースは、悲しみ、喜び、信頼などの感情を生じさせるものであることが多かった。

研究チームは、これらの特徴、特に「目新しさ」の大きさが、虚偽のニュースを注目されやすくしているのかもしれないと言う。

今回の研究の知見は、「フェイクニュース」には定石があり、その特徴を備えていれば自然と拡散されるということを意味しているのだろうか? マイクロソフトの研究所であるマイクロソフトリサーチ(米国ニューヨーク)のソーシャルネットワークの専門家Duncan Wattsは、「その可能性は低い」と言う。これまでの研究から、特定の話が広まる力をその内容と結び付けるのは難しい、ということが示唆されている2。また彼自身、個々の話の広まり方を予想するのは難しいと考えているからだ。

正しいニュースのリツイートの回数が少ないように見えるのは、そうしたニュースについてはユーザーが単純なリツイートを行わず、一次資料へのリンクを共有しているからかもしれない。その場合、正しいニュースは小規模な滝の水のように穏やかに伝わり、「フェイクニュース」は大規模な滝のように勢いよく伝わることになるだろう。

Wattsは、フェイクニュースが問題であることに異論はないと言うものの、フェイクニュースの脅威についての話は割り引いて聞かなければならないと指摘する。他の研究から、中道派であれ特定の党派の熱心な支持者であれ、ほとんどの人は主流派の情報源からの正確な情報を圧倒的に多く消費していることが裏付けられているからだ。「ツイッター上のフェイクニュースを巡るパニックは、間違った反応だと思います」。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Vosoughi, S., Roy, D. & Aral, S. Science 359, 1146–1151 (2018).
  2. Martin, T., Hofman, T., Sharma, J. M., Anderson, A. & Watts, D. J. Proc. 25th Int. Conf. on World Wide Web, 683–694 (International World Wide Web Conference Committee, 2016).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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