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米国北東部の地下で…

過去2億年間、米国北東部ニューイングランド地方は激しい地質変化がなく、火山活動も大地震もほとんどなかった。しかし現在は、目覚めの一歩手前なのかもしれない。

Geology 2018年1月号に発表された研究は、アパラチア山脈北部の地下で高温の岩石が泡のように上昇していることを示している。この特徴は米国全土に配置された数千台の地震計の集合体「アーススコープ」によって2016年に初めて検知された。ラトガーズ大学(米国)の地球物理学者Vadim Levinは、天文学者がハッブル宇宙望遠鏡で遠い夜空を見つめることができるように、地球科学者はこの多数のセンサーによって北米大陸の地下をのぞき見ることができると言う。焼けつく岩石が地表を突き破れば、ニューイングランドがブクブクと泡立つ火山地帯に変わるだろう。

この発見は多くの疑問を呼んだ。ニューイングランドは活動中のプレート境界に位置してはおらず、北米プレートの真ん中にあるのだ。例えば高温岩石の泡がどこで生まれているのか、正確なことは不明だ。北米大陸の端はプレート境界近くのプレートよりも温度が低いため、Levinはこの低温部分がマントルを冷やしているのだろうとみる。

マントルは地殻のすぐ下の層で、地球の核に向かって伸びている。冷やされたマントルの塊が沈むと、温度の高い部分が強制的に立ち退かされ、それが地表に向かって上昇してくるだろう。アーススコープが捉えたのはそうした上昇だと考えられている。単純明快に聞こえるが、このシナリオは「今のところ教科書に記載されるような定着した話ではありません」とLevinは言う。

あるいは、北米大陸のいくつかの部分がちぎれてマントルに沈み込んでいるのかもしれないと、コロンビア大学(米国)の地球物理学者William Menke(今回の研究には加わっていない)は言う。この場合も高温のマントルが押し上げられるだろう。

どちらのモデルが正しいのか、あるいは全く異なる過程が関係しているのか、まだ分かっていない。Levinらはもっと多くのデータを集めてこの異例のホットスポットを明らかにし、併せてプレートテクトニクス理論を充実させたいと望んでいる。

翻訳:鐘田和彦

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 5

DOI: 10.1038/ndigest.2018.180509ab