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極楽鳥の漆黒の羽根

多くの極楽鳥(フウチョウ科の鳥)の雄は求愛行動に明るい色と虹色に輝く飾り羽を用いるが、いくつかの種は漆黒の羽毛も身に着けている。最近の研究で、それら真っ黒な羽毛に隠された構造上の秘密が解き明かされた。この羽毛は、光を吸収するように設計された人工素材に匹敵するビロードのような深い暗黒を生み出している。

光を通さないほとんどの物体と同様、羽毛の色も通常は表面被覆の色素が生み出しているか(メラニンによって皮膚に色がつくように)、光を反射するごく小さな表面構造から生じている(玉虫色の蝶や甲虫に見られるのと似た表面構造)。

しかし漆黒の羽毛は玉虫色とは正反対だと、この件に関する研究論文を共著したハーバード大学(米国)の進化生物学者Dakota McCoyは言う。この羽毛は当たった可視光の99.95%までを吸収すると、McCoyらは、2018年1月にNature Communicationsに報告した。

これらの特殊化した飾り羽を詳しく観察すると、羽毛が光を捉える芸当が明らかになる。羽毛の先端近くにある「小羽枝」という微細構造が、さらに小さな多数の分岐構造によって覆われているのだ。

漆黒の羽毛に林立している小羽枝(羽毛の先端に向かって約30°傾いている)に光が当たると、光は外向きではなくこれら微細構造の間の空隙へ反射されるとMcCoyは言う。これらの羽毛の表面に金を蒸着しても依然として黒く見えるのに対し、色素の黒色によって黒く見えている羽毛を同様にコーティングすると金色に見えたと付け加える。

この漆黒の羽毛に比べ、他の極楽鳥の黒い羽毛(および同チームが調べた極楽鳥の一種に見られる黒い羽毛)は、光の反射が10~100倍だったとMcCoyは言う。

この真っ黒な羽毛はより明るい色の羽毛を強調して交尾相手を引きつけるために進化したとMcCoyらは提唱している。研究チームが調べた全ての漆黒の鳥で、この特殊な羽毛はどれも、明るくて光沢のある羽毛のすぐ隣に位置していた。求愛行動の間、雄はこうした飾り羽を雌から見て最も黒く見える位置に保持しているとMcCoyは指摘する。「この漆黒の羽毛は近くの明るい色の羽毛を際立たせているのです」。

翻訳:鐘田和彦

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 5

DOI: 10.1038/ndigest.2018.180509a