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我が子を論文共著者とする行為に調査のメス

Credit: Yeon-Je Jung/AFP/Getty

韓国の研究者が自分の子どもを論文の共著者に加える行為について、韓国政府は調査の範囲を拡大している。これは学術論文の出版倫理における不正行為であるが、一部の事例から、我が子を大学受験で有利にするために行ったと推測されている。韓国は学歴社会で、大学入試は非常に過酷であるからだ。韓国教育省は、2018年1月に行った最初の調査で、学術論文の著者が我が子や親族(その多くが中学生か高校生だった)を共著者に加えている論文を82編発見し、2月1日に調査の範囲を拡大することを発表した。また2月4日には韓国科学省が、教育省による最初の調査の対象にならなかった同国の「エリート」工科大学複数校に対する独自調査に乗り出した。

最初の調査では、この10年間に韓国の文・理両分野の常勤の大学教員7万人以上が発表した論文について、1カ月かけて確認作業を行った。調査のきっかけとなったのは、2017年にソウル国立大学で教職員の子が著者になっている論文が1編見つかったことだった。

最初の調査の結果は1月25日に発表された。韓国の29の大学で同様の行為が見つかったのだ。また、教職員の親族に当たる子どもが著者となっていることが発覚した82編の論文のうち39編では、生徒らは学校のカリキュラムと関連した活動の一環として研究に参加していたようだが、残りの43編についてはそうした事実はなかったという。

教育省は、子や親族を共著者に加えた研究者の氏名や、彼らが論文を発表した雑誌名を公表していない。しかし、韓国のマスコミの報道によると、論文の多くが自然科学系の引用データベースScience Citation Index(SCI)に収録されている雑誌に発表されているという。教育省はNatureに、最初の調査は大学が自己申告した事例に依拠しており、また調査時は多くの教員が冬季休暇中だったため、調査は網羅的なものではなかったと語った。

さらなる調査

教育省の継続調査では、SCI、Web of Science、Scopusを含む引用データベースに収録されている論文のうち、韓国人が著者になっているものを探し、その著者名を大学の常勤教員7万6000人の家族関係と照合した。この調査は3月16日まで行われた。

教育省は当該大学の研究倫理委員会に付託し、個々の事例について不正なものか正当な理由があるものかを検証させる予定である。同省によると、共著者に加わった子や親族が研究に参加していなかった場合には、論文を発表した大学教員は解雇を含む懲戒処分を受ける可能性があるという。

こうした論文が特に多い大学の中には、ソウルのエリート高等教育機関とされる成均館大学(8例)、延世大学(7例)、ソウル国立大学(6例)、国民大学(6例)などが含まれている。成均館大学の広報担当者は、同大学は教育省の要請に従って調査を行い、結果によっては解雇を含む懲戒処分もあり得ると認めた。

延世大学は、政府からのさらなる情報を待っているため、Natureの質問には答えられないと回答した。ソウル国立大学の広報担当者は、不正行為が実際にあったことを示唆する発見はまだないこと、また同大学の研究公正委員会が全ての事例を調査する予定であることを強調した。

国民大学の広報担当者はNatureに、同大学の事例に関する最初の調査は、共同研究が適正に行われたことを示唆しているとした。「彼らの子や親族が多くの活動に参加していたとする記録や覚書があるので、本学では何の問題もないと考えています」。

しかし、研究者が子や親族を論文の共著者に加える行為は韓国世論から激しく抗議された。Korea Heraldは社説で、これは「いかさまとしか言いようのない行為であり、韓国の大学の公正性と教育全体を大いに脅かすものである」と指摘している。教育省は、研究に参加せずに共著者となったことで大学に合格した学生は、合格を取り消されることになるだろうという。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 5

DOI: 10.1038/ndigest.2018.180516

原文

Kid co-authors in South Korea spur government probe
  • Nature (2018-02-08) | DOI: 10.1038/d41586-018-01512-5
  • Mark Zastrow