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頭でっかちは無用?

大学生から企業の重役、社長まで、知性ある人はより優れたリーダーとなることを複数の研究が示している。だが、リーダーシップに関する新研究によると、ある値よりも高いIQ(知能指数)を持つのはかえって有害と考えられる。

頭の良いリーダーが率いるグループは客観的な基準で測って優れた成果を上げることが以前の研究から示されていたものの、一部の研究では、リーダーの知能がずば抜けて高い場合には部下がリーダーをあまり有能ではないと感じる可能性がうかがわれた。数十年前、カリフォルニア大学デービス校(米国)の心理学者Dean Simontonは、才気あふれるリーダーの言葉は人々の頭上をそのまま通過するだけで、そうした人が示した解決策は複雑すぎて実行不能となり、部下はリーダーを煙たく感じるだろうと唱えた。最近、Simontonらはこの仮説をついに検証し、Journal of Applied Psychology 2017年7月号に発表した。

IQ120に評価のピーク

研究チームは金融や小売り、技術などさまざまな業界にわたる30カ国のビジネスリーダー男女合わせて379人を調べた。こうしたリーダーたちはIQテストを受け(完璧ではないが多くの領域で成績の確かな予測因子となる)、それぞれ平均8人の同僚からリーダーシップの形態と効果について評価を受けた。有効性や戦略形成、洞察力などいくつかの特徴に関する評点とIQとの間には正の相関が認められたが、それはあるポイントまでだった。評点はIQが約120(会社員の約80%はIQ120以下)でピークとなり、これを超えると評点は下がった。その労働文化の中で技術的スキルと社会的スキルのどちらに価値があるかによって、“理想的なIQ”は上下し得るのだろうと研究チームはみている。

研究論文の筆頭著者であるローザンヌ大学(スイス)の心理学者John Antonakisは、リーダーは自らの知性を用いて、他者を説得し触発する創造的な暗喩を生み出すべきだと提案する。オバマ前米国大統領が行ったような方法だ。「賢い人がその知性を適切に示しながら人々とのつながりを維持するには、カリスマ的な話し方をするのが唯一の道だと思います」とAntonakisは言う。

翻訳:鐘田和彦

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 4

DOI: 10.1038/ndigest.2018.180408b