細胞はウイルス由来のタンパク質を使って情報伝達を行う
Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180305
原文:Nature (2018-01-11) | doi: 10.1038/d41586-018-00492-w | Cells hack virus-like protein to communicate
細胞が情報伝達を行う様式に、これまでに知られていないものが見つかった。長期記憶に関わるタンパク質Arcは、ウイルスが遺伝物質を運ぶのと似た形式でそれを行っていたのだ。
M. WURTZ/BIOZENTRUM, UNIVERSITY OF BASEL/ SCIENCE PHOTO LIBRARY/Getty
動植物のゲノム内には、ウイルス由来の塩基配列が至る所に存在している。これは、ウイルスが数億年前に自らのDNAを動植物のゲノムに組み込んだためだ。こうした配列の多くは活性を持たないが、今回、2つの研究チームが、マウスとショウジョウバエにおいて細胞の情報伝達に関与しているArcという遺伝子は、こうしたウイルス由来の配列の一部から進化したことをそれぞれ示し、2018年1月11日にCellに報告した1,2。この2編の論文によれば、Arcにコードされるタンパク質は、そのウイルス様構造を利用して細胞間で情報伝達を行っているという。これは新しい形式の細胞間情報伝達であり、長期記憶形成などの神経学的機能に非常に重要な役割を果たしている可能性がある。