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古代木の年輪

マツの木の幹を切ると、同心円状の輪が見える。この年輪は成長期と対応している。だが全ての切り株がこうとは限らない。去る11月にProceedings of the National Academy of Sciencesに発表された研究は、世界最古の木が全く異なる構造をしていたことを明らかにした。

約3億7000万年前、高さ8mを超える「クラドキシロン」という木が生えていた。葉ではなく細い小枝のような分岐で覆われ、ひょろ長いヤシの木のような見た目だった。現在に残る化石は非常に少なく、その内部構造はほとんど分からなかった。ほとんどの場合、化石化する前に内部は腐り、砂が詰まってしまった。だが最近、保存状態の良い化石が中国で2つ発見され、この木の内部の仕組みが明らかになった。他のどの種にも見られない構造だ。

成熟したクラドキシロンの木は基本的には中空だった。幹の縁近くに、木部(水を運ぶ管状構造)を含む太いストランド(筋)が縦に走っていた。現代の樹木は成長とともに木部の層が新たに付け加わり、1つの同心円状の年輪からなる幹ができる。これに対しクラドキシロンでは「木部のストランドそれぞれに成長輪が形成されたのです」とこの研究論文の共著者でカーディフ大学(英国)の古植物学者であるChris Berryは言う。

クラドキシロンの切り株を観察したら、軟組織の中に木部のストランドが何十本も保持され、そのそれぞれが成長輪を伴った小さな“木”のように見えるだろう。成長につれてこれらの木部がそれぞれ複数に分かれ、植物全体に水を供給したと考えられる。そして新たにできたストランドの周りに年輪が形成された。

木の一生を通じ、これらのストランドは互いに交差し織り合わさって、中空の中心の周りに入り組んだ格子細工を形成したと考えられる。

現生の植物にクラドキシロンの子孫に当たるものはないものの、重要な役割をこの古代木から受け継いでいる。クラドキシロンは地球上に初めて森を作り、大気から炭素を捕獲し、地球の気候を調節する一翼を担ったのだ。とすれば、この木をもっと研究すべきだろう。木を見て森を見ずではなく、森を理解するためにこの木を見る必要がある。

翻訳:粟木瑞穂

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 2

DOI: 10.1038/ndigest.2018.180204b