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パルサー発見者にブレイクスルー賞

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2018.181211

原文:Nature (2018-09-06) | doi: 10.1038/d41586-018-06210-w | Pulsar discoverer Jocelyn Bell Burnell wins $3-million Breakthrough Prize

Zeeya Merali

ジョスリン・ベル・バーネルはブレイクスルー賞の賞金約3億円を、科学におけるダイバーシティーの推進のために使うという。

ジョスリン・ベル・バーネル氏は、ケンブリッジ大学の博士課程学生時代にパルサーを発見した。 | 拡大する

DAVID HARTLEY/SHUTTERSTOCK

50年前にパルサーを発見した天体物理学者ジョスリン・ベル・バーネル(Jocelyn Bell Burnell)が、300万ドル(約3億3000万円)という高額の賞金で知られるブレイクスルー賞を受賞した。パルサーは高速で自転しながら電磁波を放射するコンパクトな天体で、彼女はその発見者でありながら、女性ゆえにノーベル賞を受賞できなかったといわれてきた。ブレイクスルー賞選考委員会は、75歳になったベル・バーネルの科学的業績と、この50年間の「人々を鼓舞するリーダーシップ」をたたえて、基礎物理学ブレイクスルー賞の特別賞を贈った。

フラットアイアン研究所(米国ニューヨーク)の天体物理学者Chiara Mingarelliは、「彼女以上にこの賞にふさわしい科学者は思い付きません」と言う。「ベル・バーネルは、この分野の先駆者であり、大家であるだけでなく、最高のロールモデルでもあります。科学に携わる全ての女性の擁護者です」。

現在オックスフォード大学(英国)とダンディー大学(英国)に所属しているベル・バーネルは、2018年9月6日に発表された同賞の受賞について「全く驚いています」と語った。「生まれて初めて、言葉を失うという経験をしました」。彼女は賞金を使って科学界のマイノリティーのための博士課程奨学金を創設したいと考えていて、すでに、英国とアイルランドの国立の物理学研究所と相談しているという。彼女はその理由について「ダイバーシティーは非常に大切だからです」と説明する。「私が最も重要な研究を行ったのが学生時代だったからということもあります」。

パルサーとは、高速で回転しながら放射を行う高密度の天体で、磁極から短い周期で光を放射しているため規則的に明滅する。 | 拡大する

NASA

ブレイクスルー賞は2012年に創設され、グーグルの共同設立者セルゲイ・ブリン(Sergey Brin)をはじめとする起業家たちが資金を提供している。基礎物理学、生命科学、数学の3つの賞があり、通常は12月に授与される。受賞者の選考に当たっては、誰でもオンラインで候補者を推薦でき、それに基づいて選考が行われるが、選考委員会は独自に特別賞の授与を決定することができる。特別賞はこれまで、スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)や、重力波を発見したレーザー干渉計重力波天文台(LIGO)の研究チームに贈られた。

パルサーはほぼ中性子からなる高密度の恒星で、非常に正確な周期で自転しながら電磁波を放射している。1967年、ケンブリッジ大学(英国)の天文学者アントニー・ヒューイッシュ(Antony Hewish)の研究室の博士課程学生だったベル・バーネルは、ケンブリッジの電波天文台が収集したデータを記録した数百メートルのチャート紙を分析していた時に、反復して現れる謎の「汚れ」に気付いた。彼女はこれらが、高速で自転する星(パルサー)が発する電波パルス信号であることを確認できた(2017年10月号「正確な周期で電磁波を発する天体」参照)。「この発見は、彼女の好奇心、決意、創造性の証拠です」とMingarelliは言う。

1974年、ヒューイッシュは同僚の電波天文学者マーティン・ライル(Martin Ryle)と共に天体物理学の先駆的研究についてノーベル物理学賞を受賞した。ヒューイッシュはその際、「パルサーの発見に決定的な役割」を果たしたとされたが、ベル・バーネルの貢献は見落とされた。ベル・バーネル自身は、ノーベル賞が学生には与えられないことは分かっているので、自分が受賞できなかったことは気にしていないと語っていた。

彼女の発見は半世紀後の今でも重要だ、とMingarelliは言う。例えば、今年初めには、NASA(米航空宇宙局)の科学者たちが国際宇宙ステーション(ISS)のSEXTANT実験により、パルサーを利用した航法が可能であることを示した。未来のロボット宇宙船は、パルサーが放射するX線の正確な到達時刻を利用し、三角法を使って自分の現在位置を知ることができるかもしれない。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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