News Scan

チーターのお見合いシステム

飼育チーターの繁殖を目指している動物園は、結婚相手選びで深刻な問題に直面している。だが、意外な解決策が見つかったようだ。独身の雌に雄の尿の匂いをかがせ、それに基づいてパートナーを選ばせるという方法だ。

雌のチーターはパートナー候補の雄の尿の匂いをかぐだけで遺伝的つながりの程度を感知でき、遺伝的に遠い雄を好んで選ぶことが最近の研究で分かった。この発見はチーターの飼育下繁殖を改善して保護に寄与する可能性がある。「尿に出てくる情報はとても多く、チーターが優れた結婚相手選びにこれを利用するのは理にかなっています」と、エンデンジャード・ウルフ・センター(米国ミズーリ州)の動物保護担当理事で、Zoo Biology 2018年7/8月号に掲載された研究論文の筆頭著者Regina Mossottiは言う。

Mossottiによると、チーターの繁殖を計画している動物園は一般に、子孫の健康を損なう恐れのある近親交配を避けるため、他の施設と連携して動物を貸し借りしている。主に遺伝的類似性に基づいたお見合いシステムが使われているが、計算結果がめでたく結婚につながるとは限らない。

一方、野生の雌のチーターは広範囲を歩き回り、雄が縄張りに残したマーキングの匂いをかいで、パートナー候補を探しているようだ。そこで研究チームは、飼育下でパートナー候補を引き合わせるために尿を使う案を試すことにした。全米の動物園をドライブして回り、チーターの尿を収集。遺伝的関連がさまざまに異なる17頭の雄から得た尿サンプルを雌のチーター12頭にかがせ、反応を評価した。この結果、雌は遺伝的つながりが遠い雄の尿の近くで過ごす時間が常に長くなることが分かった。

世界的な野生ネコ科動物保護団体パンセラのプログラムディレクターであるPaul Funstonは、この研究の有用性評価した上で、動物園での繁殖事業について疑問を投げ掛ける。「飼育下のチーターをうまく野生に戻せることを示す証拠は多くないのです」という。だが、特に絶滅が危惧される一部の亜種は飼育下繁殖を支持できると付け加える。

研究の次の段階は、この尿テストが繁殖成功率の向上に結び付くかどうかを調べることだ。いくぶん時間を要するだろうが、この研究はすでに飼育チーターの管理に関する動物園の考え方を変えつつあるとMossottiは言う。

翻訳:粟木瑞穂

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 12

DOI: 10.1038/ndigest.2018.181206a