News

木星に新たに10の衛星発見

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2018.181011

原文:Nature (2018-07-19) | doi: 10.1038/d41586-018-05725-6 | Jupiter has 10 more moons we didn't know about — and they're weird

Alexandra Witze

今回発見された衛星の1つは、近くの軌道を公転する別の衛星と衝突する進路にある。

Jupiter formed more than 4 billion years ago. | 拡大する

NASA

2018年7月17日、カーネギー科学研究所(米国ワシントンD.C.)の天文学者Scott Sheppardを中心とする研究チームが、木星の周りを公転する小さな衛星を新たに10個発見したと報告した。2017年に発表した2個を合わせると、同チームは通算で12個の衛星を発見している。また、これに従えば、木星は79個の衛星を持っていることになる。この数は惑星の中で突出して多い(次点は土星の62個である)。今回発見された衛星のうち1つは、近くの軌道を公転する他の衛星とは逆方向に動く「変わり者」だった。

木星の衛星は太陽系の初期の歴史を理解するためのヒントを与えてくれる。小さな衛星がこれだけ多く存在していることは、これらの衛星が今から40億年以上前、木星本体が形成された後に、天体同士の衝突によって生じたことを示唆している。

この成果を同僚らと発表したSheppardは、「衛星は木星と同時に形成されたのではなく、木星の形成期かその直後に木星に捕獲されたと考えられます」と言う。なお、この成果は2018年8月30日に、米国天文学会誌の1つResearch Notes of the AAS に掲載された。

Sheppardのチームは、普段は冥王星よりさらに遠くにある太陽系天体を探していて、その探索の過程で、近くにあるこうした衛星を発見することがある。同グループが2017年に2つの木星の衛星を発見したのも、まだ誰も見たことのない推定上の巨大な第9惑星「プラネット・ナイン」の探索中だった(2016年4月号「太陽系に未知の巨大惑星発見か」参照)。たまたま彼らが探索を行っていた空の区画に木星があったので、木星の衛星も一緒に探すことができたのだ。

太陽系天体を新たに発見してその軌道を計算するためには、数週間~数カ月の期間を空けて空の同じ区画を撮影する。それから2つの画像の画像を比較して、背景の恒星に対して位置が変わっている天体を探す。研究チームは最初にセロ・トロロ汎米天文台(チリ)の4mビクター・M・ブランコ望遠鏡で今回報告した衛星の大半を見つけ、次に別の望遠鏡で追跡観測を行った。

奇妙な衛星

新たに発見された衛星はどれも小さく、直径は1~3kmしかない。そのうちの7個は、木星から2000万km以上離れた大きな軌道を、木星の自転とは逆方向に公転している。こうした衛星は逆行衛星と呼ばれる。

新たに発見された木星の衛星バレトゥードー(黄色の目印)の、背景の恒星に対する動きを示す写真。 | 拡大する

NASA

今回発見された衛星の中で最も目立つのは8個目の衛星だ。この衛星は、逆行衛星に近いところの軌道を、これらとは逆方向に(つまり、木星の自転に対して順方向に)公転している。さらに、その軌道は逆行衛星の軌道に対して傾いているため、そのうち逆行衛星と衝突して砕け散ってしまっても意外ではない。もしかすると、この衛星自体が、過去に起きた同様の、より規模の大きい衝突の名残なのかもしれないとSheppardは言う。

木星の衛星はローマ神話のユピテル(ギリシャ神話のゼウスに相当する主神。木星を表す英語「Jupiter」は、この神の名に由来している)と関係のある神々にちなんで命名されている。Sheppardは、この変わり者の衛星に、ユピテルの子孫の1人である衛生と健康の女神「バレトゥードー(Valetudo)」の名前を付けることを提案している。

9個目と10個目の衛星は、より木星に近い軌道を公転していて、木星の自転と同じ方向に運動している。

これらの小さな衛星が木星と同じ時期に形成されていたとしたら、生まれたばかりの惑星の周りでまだ渦を巻いていたガスや塵に捉えられ、一緒に木星に飲み込まれていただろう。だから、木星の周りに小さな衛星が存在すること自体が、木星の形成後に宇宙を漂っていた小さめの天体同士が衝突し、その周りを公転する破片が残されたものであることを示していると言える。

天文学者がこうした衝突の歴史を解き明かすことができれば、若かりし日の木星の軌道に引き寄せられた衛星について大きさを決定できるはずだ。メリーランド大学カレッジパーク校(米国)の天文学者Douglas Hamiltonは、「これは非常に重要な問題で、今回の10個の衛星の発見を興味深いものにしています。どうすれば、今回の知見を惑星形成の仕組みと結び付けることができるでしょうか」と言う。

Sheppardは、木星の衛星はあと数個あるかもしれないと話す。今回の観測を行った時期に、たまたま太陽の光に埋もれていて見えなかった衛星があるかもしれないからだ。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Sheppard, S. S. et al. Res. Notes AAS 2, 155

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

プライバシーマーク制度