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大麻由来の抗てんかん薬が米国で承認

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2018.181015

原文:Nature (2018-07-12) | doi: 10.1038/d41586-018-05659-z | Coming soon to a lab near you? Genetically modified cannabis

Amy Maxmen

米国食品医薬品局が大麻由来の薬剤を初めて認可した。これを口火に、大麻成分の研究に対する法的規制の緩和が期待されている。

カナダの施設で昔ながらの方法で栽培されている医療用マリファナ。 | 拡大する

RICHARD LAUTENS/GETTY

2018年6月25日、米国食品医薬品局(FDA)は大麻に含まれる化合物カンナビジオール(CBD)をベースとしたてんかん発作治療薬「エピディオレックス」を認可すると発表した。大麻成分は連邦麻薬法では禁止薬物に当たるため、全米の医師がエピディオレックスを合法的に処方できるようになるためには、米国の麻薬取締局(DEA)が9月24日までにこの薬剤を別のカテゴリーに再分類する必要がある。多くの研究者は、今回、エピディオレックスだけでなく、カンナビジオールそのものの再分類を望んでいる。そうなればもっと容易に、このマリファナの非幻覚剤成分を研究できるようになるからだ(2014年6月号「米国の大麻研究を妨害する連邦政府の官僚主義」参照)。

FDAがエピディオレックスを認可した今、「我々は、この植物が人々に認められている以上の可能性を秘めていること、そして法律の面だけでなく科学的にも大きな影響力を持つという明確な認識を得たのです」とカリフォルニア大学アーバイン校に2018年に新設された大麻研究センターのディレクターDaniele Piomelliは述べる。少なくとも、DEAは研究者にカンナビジオール研究を行う許可を与えるべきだと彼は言う。特に、マリファナが合法とされている州で、人々がカンナビジオールやカンナビノイドとして知られている他の大麻化合物を使用している現状を踏まえれば、研究が制限されている現状は筋が通らないように思われると彼は付け加える。

カンナビジオール研究に対する制限の緩和は、遺伝子工学によってカンナビノイドを生産してきたバイオテクノロジーの新興企業にとっても良いニュースとなるだろう。これらの製品は、大麻草からの抽出あるいは化学合成といった従来の方法で得られたものよりも純粋で入手しやすくなる可能性がある。

「今まさに、生化学のゴールドラッシュが訪れているのです」とドルトムント工科大学(ドイツ)の生物工学者Oliver Kayserは言う。

現在、米国の30の州とコロンビア特別区では、医療用マリファナが合法とされている。しかし大麻草とその化合物は、合衆国連邦法の下でいまだに非合法とされており、最も規制の厳しい物質のカテゴリー(スケジュール1)に分類されている。禁止薬物の取り扱いに関する連邦の規則に従うことに時間と資金を注ぎ込める少数の研究者だけが大麻研究に取り組むことができるのだ。一般的に処方されるオピオイドであるオキシコドン(オキシコンチン)や、コカイン、ケタミンといった、スケジュール1ほど規制の厳しくないカテゴリーの薬物を研究する場合、障壁ははるかに少ない。

しかし研究の許可を得ている研究者でも、大麻の供給元は1カ所に制限されている。大麻とその抽出物を研究者に供給することを認可されている米国で唯一の施設はミシシッピ大学(オックスフォード)である。科学者たちは製薬会社から入手できる少数の合成カンナビノイドを研究する許可を求めることもできるが、これらのソースはあまりにも限定されているか、高価すぎて有用とは言い難いという意見もある。

「カンナビノイドを研究するには多大な忍耐が必要です」とコロンビア大学(米国ニューヨーク)の神経科学者Ziva Cooperは言う。Cooperらは2018年2月に発表した論文で、ミシシッピ大学から購入したマリファナを吸い、そしてオキシコドンの典型的な用量の半分を服用したグループは、オピオイドの全用量を服用しただけのグループと同様の鎮痛効果を経験したと報告した(Z. D. Cooper et al. Neuropsychopharmacology https://doi.org/10.1038/s41386-018-0011-2; 2018)。この組み合わせによって医師たちがオピオイドの処方量を減らし、それによってオピオイド依存症のリスクを低減できるかどうかを調べるために、Cooperはより大規模な臨床試験を実施したいと考えている。しかしまだ、大麻研究に課された制限のせいで、試験の承認は得られていない。

需要を満たす

もし法律上の障壁がなくなれば、科学者たちはさまざまな手段によって生産された高品質のカンナビノイドを研究したいと考えるだろう。遺伝子組換え細菌や酵母を使って作られた大麻化合物が需要を満たす助けになるかもしれない。

バイオテクノロジー企業ヒアシンス・バイオ社(カナダ・モントリオール)の代表Kevin Chenは、研究者たちは同社によるカンナビジオールの生産拡大に興味を示しており、実現した場合にはすぐにでも購入する可能性があると言う。カナダの医療用大麻製造会社オーガニグラム社(モンクトン)は2018年5月に、製造拡大を助けるためにヒアシンス・バイオ社に1000万カナダドル(約8億4000万円)を投資する意向を発表した。

もう1つの別のカナダの会社、インメッド・ファーマスーティカルズ社(バンクーバー)は大腸菌を用いた稀なカンナビノイドの生産を洗練させている。有益な可能性のあるこうした化合物は植物中には非常に微量しか含まれていないため、研究できるだけの量を抽出するのは非現実的だと、シドニー大学(オーストラリア)の化学者Samuel Banisterは言う。「微量成分のカンナビノイドを得るために、合成生物学が非常に必要とされるのです」。

DEAがカンナビジオール全般ではなく、エピディオレックスのみをスケジュール1物質のカテゴリーから除外することに決めるなら、米国の研究者たちはこうした企業の製品を利用できないかもしれない。その代わりに、これらの物質はカナダの研究所に流れるだろう。カナダでは医療用および嗜好用マリファナが2018年10月17日以後、合法化されるからだ。または、研究はドイツとオランダで急速に進むかもしれない。これらの国では大麻を研究する科学者たちにほとんど障壁はないとKayserは言う。彼は需要を予想して、遺伝子改変酵母でのカンナビノイドの生産に関する特許を欧州で出願中だ。

(翻訳:古川奈々子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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