国際単位系(SI)が変わる
国際単位系(international system of units:SI)の定義の改定が進んでいる。国際度量衡委員会(CIPM)は、1960年に国際単位系が創始されて以来最大規模の見直しにより、7つの基本単位のうち、アンペア(A)、キログラム(kg)、ケルビン(K)、モル(mol)の4つの定義の改定に乗り出した。基礎的な定数との関係を使って定義し直すことで、抽象的・恣意的な定義に頼らないようにすることが目的だ。CIPMは、2017年10月16~20日にパリ近郊で開かれた会合で、この計画について検討し、勧告をまとめた。国際単位系を監督する国際度量衡総会(CGPM)が2018年11月に開催され、ここでCIPMの勧告が承認されれば、4つの基本単位の定義が2019年5月から改定となる。
現時点では、キログラムはパリ近郊の施設の密閉容器中で保管されている国際キログラム原器という金属塊の質量として定義され、電流の単位であるアンペアは、無限に長い2本の導線の間に働く力についての思考実験によって定義されている。モルは、0.012kgの炭素12の中に存在する原子の数に等しい数の要素粒子を含む系の物質量として定義され、ケルビンは、水の三重点(水と氷と水蒸気という3つの相が平衡状態で共存する温度と圧力)との関係で定義されている。これらの基本単位は、将来的には定数との関係で導出されることになるわけだ。例えばアンペアは、電気素量(電子の電荷の大きさ)に基づいて定義される。
国際単位系の定義の改定は、日常レベルの測定には影響を及ぼさないかもしれないが、最高レベルの精度で測定を行う科学者にとっては、より多くの方法で、どんな場所や時間でも、どんなスケールでも、精度を損なうことなく測定を行えるようになるという恩恵がある。
翻訳:三枝小夜子
Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 1
DOI: 10.1038/ndigest.2018.180115
原文
New definitions of scientific units are on the horizon- Nature (2017-10-19) | DOI: 10.1038/550312a
- Elizabeth Gibney
-
編集部註:国際単位系の再定義については、以下のNature ダイジェストの記事を参照されたい。
2014年4月号「アンペアの再定義に向けて」
2013年11月号「絶対的な絶対温度を目指せ」
2011年10月号「2010年版の基礎物理定数表」
2011年1月号「キログラム原器の引退勧告へ、さらに前進」
関連記事
Advertisement