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光子も「クーパー対」に 相当する対に

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180111

原文:Nature (2017-10-26) | doi: 10.1038/nature.2017.22868 | Photons pair up like superconducting electrons

Elizabeth Gibney

光子が、超伝導での「クーパー対」と共通する仕組みにより、物質中である種の対になるとみられることが分かった。

ブラジルの物理学者たちは、水にレーザー光パルスを当て、超伝導のクーパー対と共通する仕組みで生じたとみられる光子対を検出した。 | 拡大する

Cassiano Rabelo

超伝導は、電流が物質中で抵抗ゼロで流れる現象だ。超伝導の原因は、電子が物質中で、ある仕組みで「クーパー対」という対になることだが、今回、光子も物質中でクーパー対と共通する仕組みにより、時間的な相関を示す対になるとみられることがブラジルの物理学者たちの実験で分かった。

この研究を行ったのは、リオデジャネイロ連邦大学(UFRJ;ブラジル)とミナス・ジェライス連邦大学(UFMG;ブラジル・ベロオリゾンテ)の研究者らで、Physical Review Letters 2017年11月10日号1で報告した。このプロセスは、光が水などの透明な液体を通過するときに室温で起こるが、観察はとても難しい。論文の共著者で、UFRJの理論物理学者André Saraivaは、「対の形成が起こり得るというだけではなく、それはどこにでもあるのです」と話す。

この発見は、UFMGのAdo Jorioが率いる研究が発端だった。Jorioらは、光が物質中でどのように散乱されるかを研究していた。光の散乱が起こるとき、光子は物質中の原子にエネルギーを与えてエネルギーの一部を失う場合があり、この原子は振動する。もしも、2番目の光子がすぐにこの振動エネルギーを吸収したら、2つの光子は間接的に関連付けられ、1つがエネルギーを得て、もう1つは失うことになる。

UFRJの物理学者Belita Koillerは、Jorioの研究の話を聞いて、1つの光子が引き起こした振動がもう1つの光子に影響するというこのプロセスが、超伝導でのクーパー対の形成と似ていることに気付いた。クーパー対では、電子が引き起こした、原子の格子の振動が、もう1つの電子を引きつける。

超伝導では、クーパー対を作ることにより、多数の電子がエネルギーの低い同じ状態に入ることができ、電流が抵抗なしに流れる。この仕組みで超伝導を説明した理論はBCS理論と呼ばれている。

クーパー対の原因になっている原子格子の振動は、量子力学によって許されたわずかな時間だけ存在するもので「仮想フォノン」と呼ばれる。Koillerらは、光子の場合も仮想フォノンが関与しているのではないかと考えた。

UFRJの研究チームは、光子も、仮想フォノンを通じて互いに相互作用しているとしてBCS理論と同様の理論的取り扱いで記述でき、光子間の相互作用には電子間の相互作用と共通点があることを理論的に示した。

一方、UFMGの研究者たちは、水やトルエンなど透明な8種の液体に室温でレーザー光パルスを通過させることにより、そうした光子対が形成されている証拠を探した。彼らは、現れる光子の中から、同時に到着した対で、1つの光子は赤色方向へ色が変化し(エネルギーを失っている)、もう1つは青色方向に変化している(エネルギーを得ている)ものを探した。

研究チームは、そうした同時に得られる光子対(エネルギーは同量だけ増加・減少している)の数が、そのエネルギー(波長)変化量に応じて、どう増減するかを、特定の波長の光を通過させるフィルターを使って調べた。その実験結果は、光子も仮想フォノンを仲立ちとして対になっているとして、BCS理論と同様の理論的取り扱いで計算した結果とよく一致した。得られる光子対は極めてわずかで、1秒間に約10の16乗個の光子が物質を通過しても、得られる対は10対にすぎなかった。それでも、全くの偶然で観測される数の100倍に相当する。

クーパー対の場合は、電子間に引力が働き、電子対は束縛状態になっている。一方、今回の光子対は、エネルギーが同量だけ増加・減少した対が同時に観測される、時間的な相関を示す。今回の現象と超伝導との類似性をどこまで見いだせるのかは、今後の研究課題だ。

ロチェスター大学(米国ニューヨーク州)の量子物理学者で、今回の研究には参加していないNick Vamivakasは、「これは、光散乱、物性物理学、量子光学の見事な交差点のような研究で、本当にわくわくします」と話す。

物質中では、クーパー対は広範囲の興味深い効果に関係しているが、今のところ、光子対が何かの効果に関係していることを示すデータは得られていない。「その問題はまさに私たちが解明したいと思っている、とても重要な課題です」とSaraivaは話す。

光子対の数を増やすことができれば、この効果を応用することも可能かもしれない。光子対と物質の相互作用を利用して、現在は検出できない物質の性質を明らかにできるかもしれない。また、光子対が、2粒子のタイミングだけではなく、その量子的性質も関連し合っているのであれば、室温の水は「もつれた光子」の非常に安価な発生源になるかもしれない。もつれた光子は、量子暗号や量子計算に不可欠なものだ。

(翻訳:新庄直樹)

参考文献

  1. Saraiva, A. et al., Phys. Rev. Lett. 119, 193603 (2017).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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