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レジを変えて食習慣を変える

お腹がすいているときにスーパーに行くと、買うつもりのなかったものを余計に買って帰ることがある。だが衝動買いの原因は、空腹の苦しみだけではない。商品の陳列場所も影響しているのだ。

レジの近くはジャンクフードの陳列が特に多い。レジ周辺に最もよく置かれている商品は糖分や塩分の多いスナック菓子であることが調査研究によって示されている。それらを健康的な商品に取り換えるだけで客の行動を変えられることを示唆する報告もある。

例えば2012年にオランダで行われた研究では、病院の売店の棚で手に取りやすい位置に健康的なスナックが置いてあると、病院職員がジャンクフードを控える傾向があることが見いだされた。2014年にノルウェーとアイスランドで行われた研究では、レジ周囲に置かれていた不健康な商品を健康的なものに変えると、会計直前にカゴに入れる健康的食品の額が大幅に増えることが分かった。

ニューヨーク市保健精神衛生局はこれらの発見に注目し、1000軒を超える店のオーナーの協力を得て、栄養価の高い食品を仕入れて販促してもらっている。同局の調査研究員Tamar Adjoianは、「健康的な食品をより魅力的に陳列すれば、それらの購入を増やすことができます」と言う。

Adjoianらは欧州の研究結果が多数のレジが並ぶニューヨークの店舗にも当てはまるか確認するため、スーパー3軒に研究に協力してもらった。各店舗に1列だけ健康的な商品を陳列するレジを作り、キャンディーやクッキーなどの加工スナックの代わりに果物やナッツなど1食200キロカロリー以下の商品を置いた。そして2週間にわたり、各店舗での購入の様子を1回3時間、合計6回記録した。

観察された2100人超の客のうち、レジ付近の陳列商品を購入したのは4%だけだった。だがそれらの人について見ると、健康的な商品を陳列したレジに並んだ客は通常のレジに並んだ客に比べ、栄養価の高い商品の購入が2倍多く、不健康な商品の購入は40%少なかった。2017年9月のJournal of Nutrition Education and Behaviorに報告。

この効果は小さいように思えるかもしれないが、陳列商品を変えたレジの数を増やせば、客の目を栄養価の高い低カロリー食品に向けることができるとAdjoianは考えている。

翻訳:粟木瑞穂

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 1

DOI: 10.1038/ndigest.2018.180107a