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研究助成金獲得の秘訣

研究助成金をめぐる競争はこれまでにない激しさになっている。Natureは助成金獲得の熟練者に話を聞き、データを徹底的に調べて、どのような戦略が有効で、よくある助言のうちどれを無視するべきかを探った。

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ILLUSTRATION BY SÉBASTIEN THIBAULT

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170918

原文:Nature (2017-05-25) | doi: 10.1038/545399a | The best-kept secrets to winning grants

Kendall Powell

麻酔専門医で臨床研究者であるPeter Nageleが初めて独立の地位を得たとき、滑り出しは上々だった。ワシントン大学セントルイス校(米国ミズーリ州)の自分の研究室のために、2007年にキャリア初期研究者向けのグラントを2つ獲得していたからだ。しかし、米国立衛生研究所(NIH)の高額のグラントを2回申請したところ、いずれも不採択となった。心が折れるような思いだったという。Nageleはこのとき、初歩的な過ちを犯していた。一方の提案は、1万人の患者を対象とする臨床試験に関するもので、規模が大きすぎた。もう一方は、NIHの優先研究領域ではなかった。「どちらのプロジェクトも日の目を見ませんでしたが、考えてみれば当然でした」と彼は言う。

3回目の挑戦までに彼はグラント獲得の秘訣を習得していた。提案の草稿を同僚に見せてフィードバックをもらい、NIHのプログラムオフィサーと話をして最善の戦略を練り、実績ある共同研究者を提案に追加したのだ。

入念な下準備が報われたのは2015年のことだった。手術後の心臓の不具合を予防するためにβ遮断薬を用いる小規模の臨床試験についてグラントを申請したところ、年間約50万ドル(約5500万円)が交付されることになった。Nageleは、成功と失敗を分けたのは「研究の重要性と実現可能性」だったと考えている。彼は、自分と研究協力者が、与えられた時間と予算の中で研究を成し遂げられることを審査員に対して証明したのだ。

研究助成金をめぐる競争は熾烈で、生物医学研究の単一の助成金提供機関としては世界最大を誇るNIHのグラントの人気は特に高い。R01をはじめとするNIHの研究プロジェクトグラントは、研究者が主導する米国の生物医学研究を助成するための主要なシステムであり、常に約2万7500人の研究者を支援している。この5年間、グラントの平均採択率は18%で、歴史的に低い水準となっている。2008年以来、NIHの予算はほぼ横ばいである上、先の見通しも不透明であるため、この傾向が変化する兆しはほとんどない。その結果、グラントの審査員は、申請者を間引きするため、どんな些細な不備でも見落とすまいと目を光らせるようになっている。

だから、NIHのグラントの申請は、うんざりするほど厄介だ。まだ要領をつかめていない若手研究者にとっては、なおのこと難しい。NIHの研究所の1つである国立一般医科学研究所(NIGMS)の所長Jon Lorschは、「故意ではないのですが、このシステムには多くのバイアスがあります。経験を積むほど、こうしたバイアスによりさらに有利になるのです」と言う。ちなみにNIGMSは、NIHが提供する研究グラントの11%以上を交付している。

経験豊富な研究者やグラントマネジャーは、採択率を高められる方法を知っている。例えば、新規研究者を助けるためのプログラムを活用する、必要に応じて上位の研究者と手を組む、適当な予算と助成システムを選ぶ、助言をくれるNIHのスタッフと早い時期から頻繁に話をするなどが挙げられる。

ここで示すことの多くは世界中どこの助成金申請にも当てはまり、多くの助成金提供機関が呼び込んで保護したいと考えている若手科学者には特に役に立つはずだ。

キャリア初期の研究者は、グラント審査委員会にとって未知数の存在だ、とLorschは言う。「それでも彼らは、このシステムにとって重要な存在なのです」。

経験の少なさは有利に働く

NIHのかつての助成システムは実績のある研究者に有利だったが、2008年以降、NIHはこの傾向を逆転させようと努力している。1つの戦略は、独立のプロジェクトについてNIHのグラントを獲得したことがない「新規研究者」を優先することだ。最終学位の取得または臨床研修期間修了から10年未満の研究者は「キャリア初期研究者(early-stage investigator;ESI)」と呼ばれる。NIHへの申請はグループ分けされ、新規研究者からの申請同士は比較されるが、より実績のある研究者からの申請と比較されることはない。その結果、科学者たちは同じような経験と資源を持つ申請者と競い合うことになる。

新規研究者やESIによる新規の申請の採択率は、実績のある研究者の申請の採択率と大体同じでなければならない。そして、新規研究者の提案が採択されたものの半数は、ESIによるものでなければならない。年齢は障害にならない。2016年には、50歳以上で初めてR01を獲得した研究者が約300人いた。

データは、同じ関係が幅広い年齢層に当てはまることを示している。これに対して、助成金額の均等な分配はあまりできていない(「NIHのグラント交付傾向」参照)。実際、NIHの助成を受けている研究者のわずか10%だけで、助成金額の40%以上を受け取っている。そこでNIHは、すでに100万ドル(約1.1億円)以上の助成金を獲得している研究者からの提案については「特別審議会レビュー」も実施している。また2017年5月には、助成金の総額と1人の科学者が獲得できる高額グラントの数を制限するため、「グラント支援指標(Grant Support Index;GSI)」というポイントシステムを導入することも発表した。この指標では、各種のグラントにそれぞれポイントを割り当て、研究者が一度に獲得できるグラントを21ポイント(R01グラント3つ分)までとしている(訳註:発表からわずか1カ月後の6月、NIHはGSIの導入を撤回した)。

NIHのグラント交付傾向
2016年にR01および同等のグラントを獲得した研究者は41〜45歳の年齢層が最も多かったが、半数以上のグラントが46歳以上の研究者に交付された。 | 拡大する

US NATIONAL INSTITUTES OF HEALTH AND NATIONAL INSTITUTE OF GENERAL MEDICAL SCIENCES

研究者のグラント申請を手伝うGrant Writers’ Seminars and Workshops社(米国カリフォルニア州ビュエルトン)の経営者であるJohn D. Robertsonは、「グラント申請で、新規研究者やESIのステータスを持つ研究者がその立場を利用することは重要だ」と言う。また、若手研究者が育児休暇、病気での休職、臨床研修期間修了後の医学訓練、軍務、自然災害などのために研究を中断せざるを得なかった場合には、ESIステータスの延長について問い合わせをしてみるべきだ。

ただし、そうした研究者がグラントを申請する際には、自分に十分な能力があり、独立していることを証明しなければならない。この証明は、審査員によく知られた「実績のある研究者」には要請されない。ESIは、詳細な提案を作成して、自分が計画した研究を実施できることを示さなければならない。

上位の研究者を追加するといい(かもしれない)

VAウエストロサンゼルス医療センター(米国カリフォルニア州)の精神科医で遺伝学者のScott Fearsは、ベルベットモンキー(Chlorocebus pygerythrus)の脳の発達を調べる研究のためにR01グラントを獲得しようとして苦労していた。その一方で、別の研究については、自分より実績のある共同研究者を追加して複数研究者のためのグラントを申請し、R03という2年間の少額のグラントを獲得していた。Fearsによると、彼の共同研究者の経験も評価されたと審査員がほのめかしていたという。「その女性研究者に加わってもらったおかげで、肯定的なコメントがもらえたのです」。

多くの若手研究者は、同じ研究分野の有名な研究者と組めば、自分のグラント申請の採択率も高まるのではないかと考えている。実際、このアプローチで成功した研究者もいるようだが、熟練者は「戦略が裏目に出る可能性もある」と警告する。

グラント申請に他の研究者を入れる方法は2つある。1つは、プロジェクトに特定の専門知識や装置をもたらしてくれる共同研究者を追加することだ。もう1つは、学際的な性格のプロジェクトのために、2人以上の科学者が複数研究者向けのグラントに申請することだ。この場合、各研究者はプロジェクトの別々の要素について責任を負うことになる。NIHの複数研究者向けのグラントを申請するときには注意が必要だ。ESIが非ESIと組んで申請を行うときには、その申請についてはキャリア初期の研究者に与えられる恩恵を失うことになる。Robertsonは、上位の研究者を共同研究者として追加するように助言する。これならESIステータスは失われないからだ。

NageleはR01への3回目の挑戦でこの戦略を試し、自分のプロジェクトを成し遂げるのに必要な経験と専門知識を持つ2人の共同研究者を入れた。「戦略はうまくいった」と彼は言う。しかし、この戦略には欠点もある。協力関係は科学的に意味のあるものでなければならない。さもないと、有力者の威光を借りようとしていると審査員に思われてしまう恐れがある。また、共同研究者がかつての指導教官だった場合には、申請者は十分に独立していないと批判される可能性がある。そう捉えられてしまったら、たとえ申請が成功しても、テニュア判定に影響を及ぼしかねない。

必要と思うなら大きい金額でも要求しよう

初めてR01を申請する若手研究者が直面するもう1つの決断は、モジュラー予算が適用される範囲でグラントを申請するかどうかである。モジュラー予算とは、研究予算が年間25万ドル(約2800万円)未満の場合に、予算の内訳をモジュールと呼ばれる大まかな単位で示せばよいというシステムであり、申請を簡略化することができる。これに対して、25万ドル以上のグラントを申請する場合にはそれをどのように使うつもりか、つまり人件費、物品購入費、旅費、研究の遂行に必要なその他の経費を詳細に説明する必要がある。多くの若手研究者は、同じ部門の上位の同僚から、「NIHは経験の浅い科学者には大きな金額をくれないから、最初のグラント申請では25万ドル以上要求しない方がいい」と助言されているという。

ペンシルベニア大学医学系大学院(米国フィラデルフィア)の計算生物学者Casey Greeneはこれに対し、「言われ続けてきたことですが、科学者として、さほど説得力ある証拠が存在するとは思えませんでした」と言う。

NIHの予算削減によって毎年のように助成金が減額されている現状を考えると、モジュラー予算が適用される範囲のグラントを申請するのでは、新設研究室は研究活動が困難になる恐れがある。データからは、予算が25万ドル未満になるようにグラント申請を行っても、採択率が高まるわけではないことが示されている。2016年に交付された2万2765件のR01グラントのうち、予算が25万ドル未満だったものは55%で、45%の予算は25万~500万ドル(約2800万〜5億5000万円)だった。45歳以下で新たにグラントを獲得した研究者の約56%が、25万ドル以上の「非モジュラー予算」を持っていた。そして、これらの研究者の半数近くが新規研究者であった(「若手研究者はモジュラー予算を申請するべきか?」参照)。

若手研究者はモジュラー予算を申請するべきか?
キャリア初期研究者は、しばしば25万ドル未満のモジュラー予算を申請するように助言されるが、2016年に初めてグラントを獲得した科学者の多くは、より高額のグラントを申請・獲得している(左)。国立一般医科学研究所(NIGMS)による分析から、過去5年間、非モジュラー予算を申請した若手研究者の平均採択率は、モジュラー予算を申請した研究者の平均採択率より高いことが明らかになった(右)。 | 拡大する

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NIGMSが過去5年間に交付してきた新規のグラントを分析したところ、高額の非モジュラー予算を申請したESIは14%しかいなかったが、その採択率は25%で、実績のある研究者の採択率より高いことが明らかになった。この数字は、より少額のモジュラー予算を申請したESIの採択率よりやや高かったほどだ。熟練者は研究者に「本当に必要な金額を申請するように」と助言する。

とはいえ、申請者が高額予算に慣れていないことが明らかだと、審査の際に不利になる恐れがある。Fearsが提案したサルを使った実験は費用がかかることで知られる。審査員からのフィードバックで分かったのは、この研究では統計的検出力が足りないが、サンプル数を増やすために高額の予算を与えるのも気が進まない、という彼らの心情だった。「NIHの審査員は、いろいろな場面で、こんなふうに板挟みになっているのでしょう」とFears。

R21に逃げてはいけない

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国)の依存症研究者Wendy Walwynは、食品に含まれるオメガ3脂肪酸の摂取とオピオイド離脱における不安の軽減との間に関係があることに気付き、NIHが興味を持ちそうな橋渡し研究になると考えた。この発見は、食生活を変えるという単純な行動が薬物の常用をやめるのに役立つ可能性を示唆していたからだ。彼女は国立薬物乱用研究所(NIDA)のプログラムオフィサーたちに電話をかけて、どのスタディーセクション(審査委員会)の審査を受けるのが良いかと質問した。「彼らは全員、同じことを言いました。前臨床研究と臨床研究を結び付けて1つの申請にしてはいけないと言うのです」。つまり彼らは、提案を2つに分けてR21グラントを申請するように助言したのだった。R21は、予備的な研究に2年間資金を提供するグラントだ。「その方法はすでに2回試していました」とWalwynは言う。それはうまい戦略ではなかった。

研究室を立ち上げたての若手研究者は、しばしばR21を申請する。多くの人はR21のことを、R01を申請する際の裏付けとなる予備的データを収集する手段、あるいは、スタートアップ資金を使い切ってしまった若手研究者がR01を獲得するまでの「つなぎ」と考えている。けれども、WalwynのようにR21の獲得に失敗して不満を抱く研究者は珍しくない。R21は申請書の作成にかかる時間と労力に値しないと、多くの研究者は考えている。「申請書作成の手間に見合うだけの科学をしたいので、私はR21ではなくR01を狙います」とGreeneは言う。

それだけではない。R21の交付件数は年々減少していて、2016年には、R01やそれに相当するグラントが6065件交付されたのに対して、R21は2219件だった。その獲得は年々困難になっている。2016年のR21グラントの全体の採択率は15%で、R01より数%低かった。

ブリガム・ヤング大学(米国ユタ州プロボ)のバイオインフォマティクス研究者Stephen Piccoloは、身をもってこれを知った。「R21には手を出さないように」と言われていたが、自分の専門分野であるがんインフォマティクスの研究者に対する申請要請が出ているのを見て、彼はその助言を無視したのだった。彼の提案のパーセンタイル値(申請書のスコアが上位何%にあるか)はなかなか良かったが、4月になって、グラントは獲得できそうにないことが明らかになった。

彼はまだR21のシステムを楽観的に見ていて、改訂した提案を提出しようと考えている。その一方で、R21の限界についても現実的に捉えている。「自分のプロジェクトでR01を狙えると思うなら、短期のグラントに手を出してはいけません。R01を獲得できるまで挑戦するべきです」。

プログラムオフィサーと話をしよう

NIHのプログラムオフィサー(またはプログラムディレクター)は、申請書の提出からグラントの交付まで、研究助成システム全般を案内してくれる職員だ。彼らの役割には、電子メールや電話で研究者に助言することも含まれているが、全ての科学者がこの機会を活用しているわけではない。NIGMSのプログラムディレクターAlexandra Ainszteinは、「禁じられている質問はありません」と言う。国立精神衛生研究所(NIMH)のプログラムディレクターStacia Friedman-Hillは、各研究所のミッションや優先研究領域は助成の決定に影響を及ぼし得るため、新規研究者はこうした点について質問するべきだと言う。

Friedman-Hillによると、こうした点を考慮することで、グラントを獲得できそうにないスコアの提案(特にESIが提出したもの)が及第点に達し、グラントを獲得できることがあるという。プログラムオフィサーは、各研究所が好む助成システムやグラント獲得に必要なパーセンタイル値についても助言してくれる。相談を始めるのに最適な時期は、提案を書く前だ。具体的な目的について1ページもしくは概要だけでも書いてあれば、プログラムオフィサーは最適なスタディーセクションや具体的な公募を教えてくれる他、その研究所の現在の優先研究領域に合うような修正も提案してくれる。

実験的なアプローチや研究課題がグラントを獲得できそうにない場合には、そのことも指摘してくれる。Nageleは実際にこれを経験している。麻酔剤として用いられる亜酸化窒素ガスが抗うつ薬の代わりになる可能性があることを発見した彼は、研究協力者と共にR01を申請して、このアイデアの臨床試験を実施したいと考えた。しかし、NIMHのプログラムオフィサーとの話し合いで、臨床試験のためのグラントは、その治療介入が脳内の特定の生物学的標的に作用する場合にしか交付されないことが分かった。亜酸化窒素が作用するメカニズムはまだ明らかになっていなかった。「何週間も何カ月もかけて準備をしてR01を申請しても、申請書が到着した途端に不採択になっていたでしょう」とNageleは言う。そこで彼は、亜酸化窒素が脳内のどこに作用するかを調べるためにR21を申請してグラントを獲得した。

助言を求めるもう1つのタイミングは、スタディーセクションの会合後に評価要約を受け取ったときだ。申請者のスコアが予想されるペイラインからほど遠いときには、プログラムオフィサーは研究者に審査の際に最も批判された点を知らせて、申請書を改訂して再提出するときに優先的に修正すべき点を教えることができる。また、申請書のスコアがグラントを獲得できるかどうかの境目にある場合には、プログラムオフィサーが指導を行うこともできる。ペイラインはさまざまな理由で変動する可能性があるからだ。

Ainszteinは、境目にいる研究者に対して、最終的な決定が行われる前に申請書を再提出するように助言することが多い。実験を続けていれば、通常、何らかのアップデートがあるからだ。再提出を行っても、成功の妨げにはならない。「交付が通知されるまで、採択の保証はありません。念には念を押すのです」とAinsztein。

このように頼りがいがあり、研究者たちに「時間を大切にした方がいい」と話すプログラムオフィサーだが、彼らの時間も尊重してほしく、締め切りの3日前になって助けを求めてくるのは勘弁してほしいと言う。

Ainszteinは研究者に、審査プロセスに参加してみるように勧める。NIHにはキャリア初期審査員(Early Career Reviewer)プログラムというものがあり、若手科学者は限定的な権限を持つグラント審査員になることができるので、若手研究者はこれに応募するべきだという。審査プロセスを内側から知ることは得難い経験になるはずだ(「グラント獲得の秘訣」参照)。これを経験したPiccoloは、大いに自信がついたという。他の研究者の提案書を見たことで、「『これなら自分にもできる。努力をすれば自分も成功することができるのだ』と思うことができました」と語る。

グラント獲得の秘訣

  • NIH 科学審査センター(Center for Scienti c Review; CSR)のスタディーセクションの模擬ディスカッションのビデオを見ておこう(go.nature.com/2qhspcc)。
  • 自分の申請書を審査してほしい人物の名前をカバーレターで挙げてはいけない。「利益相反の恐れがある」として審査員から外されてしまうため。
  • 「直接競合する研究者には自分の申請書を審査させないでほしい」とカバーレターに書くときには、その人物の名前を挙げよう。
  • 研究所の優先研究領域を見分けるのに役立つ「助成金公募」や「申請要請」を探そう。分野を特定した助成金は、一般的な助成金より採択率が高い。
  • あなたの研究が基礎的な性質のものであるなら、医学的重要性を誇張したり疾患名をタイトルに入れたりしてはならない。あなたの申請書が別の研究所やスタディーセクションに回されて、採択の可能性が下がる恐れがあるため。

とはいえ、近年はあまり楽天的でいられる状況ではない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国)の依存症研究者Dara Ghahremaniは、自分が申請書を書くルームランナーの上を歩いていて、誰かがどんどん設定速度を上げているような気がすると言う。彼は非常勤講師になってすぐにR21を獲得できたが、それ以来、R21やその他のグラントを7回申請したにもかかわらず、いずれも不採択になっている。彼は、自分の給料の不足分を賄うため、他の研究者のグラント申請に共同研究者として名を連ねている。その結果いろいろなことに時間を取られ、自分の研究をタイムリーに発表することができなくなり、独立のグラントを申請することがさらに難しくなってしまった。

最初のR01を獲得してもルームランナーは止まらない。LorschやNIHの同僚は、R01グラントの更新も困難であることをよく知っている。初回の更新の成功率は、この10年で約53%から32%まで大幅に低下している。

「未来があまり明るくないなら、ESIたちをこのシステムに引き込みたくありません」とLorschは言う。初めてR01を獲得した研究者のために彼が与える助言は極めてシンプルで、「そのグラントのための研究に集中しなさい」ということだ。2つ目の大きなグラントを獲得したいという誘惑に負けてはいけない。Lorschによると、研究者がグラントの更新に失敗する筆頭原因は「十分な生産性や進展が見られなかったこと」だという。

初めてR01に挑戦したが、スコアもつかずに不採択となったという若手研究者は多い。Friedman-Hillは、そうした研究者を、「申請書の50%はディスカッションなしに却下されます。あなたの仲間は大勢います」と言って励ます。申請を却下される研究者には、若手も、実績のある研究者も、高齢の研究者もいる。「違いは、実績のある研究者は挑戦し続けるということです」。

(翻訳:三枝小夜子)

Kendall Powellは、米国コロラド州ラファイエット在住のフリーランスのジャーナリスト。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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