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深い海のサンゴが光る理由

蛍光を発する造礁サンゴの一種、オオハナガタサンゴ(Lobophyllia hemprichii)の口部。 Credit: J. Wiedenmann

深い海には、鮮やかな光を発するサンゴが生息している。2015年に発見されて以来、このサンゴが鮮やかな蛍光を発する理由は不明だったが、このたび、その理由は共生する藻類の光合成を助けるためであることが明らかになった。

浅い海のサンゴには、緑色に光るものがいることが知られている。このサンゴは、蛍光タンパク質を一種の「日焼け止め」として用いており、蛍光タンパク質が有害な紫外線を吸収して緑色光を再放射することで、共生藻類を守っているのだ。共生藻類は、サンゴが必要とするエネルギーの多くを光合成により供給している。

サウサンプトン大学(英国)のJörg Wiedenmannを中心とする研究チームは2015年、深い海(水深30~150m)に生息するサンゴも蛍光を発することを発見した(Nature ダイジェスト2015年9月号「薄暗い海を彩る色とりどりの蛍光サンゴ」参照)。こちらは鮮やかな黄色、橙色、赤色と色とりどりで、中には、165mもの深さに生息するものもいる。この深さでは太陽光がごくわずかしか届かず、そのほとんどはスペクトルの青色部分の光だ。そこで研究チームは、深い海に生息するサンゴが蛍光を発するのは「日焼け止め」とは別の理由があるのではないかと考えた。

Wiedenmannは、今回の研究で、その答えにたどり着いたと考えている。彼の説明によれば、深い海のサンゴはその生息環境において、光合成に利用可能な少量の光のほとんどを蛍光タンパク質を利用して作り出しているというのだ。言い換えれば、浅い海のサンゴは「光を遮るため」に、深い海のサンゴは「光を届けるため」に、それぞれ蛍光を発しているということだ。

光合成では赤色光よりも青色光の方が有用度が高いが、赤色光はサンゴの組織の深部まで透過する。つまり、深い海のサンゴはより多くの共生藻類に光を届けるために、赤色蛍光タンパク質を利用して青色光を橙色ないし赤色の波長へ変換しており、共生藻類に光合成で可能な限り多くの食料を作らせることによって光の少ない環境でも生存できるというわけだ。今回の研究成果は、2017年7月5日、英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society B)に報告された1

「深くて光の弱い海でサンゴが生きていくためには、光合成を行う重要な共生生物に利益をもたらすための特別な機能が必要なのです。今回の知見は、サンゴと共生藻類との関係がどれだけ複雑で洗練されたものであるかを示しています」とWiedenmannは語る。

海水温の上昇に起因する白化現象の急増で世界のサンゴの命運が懸念されるなか、浅い海でストレスを受けたサンゴが深みに適応してそこに安住の地を見いだす可能性を示唆する海洋科学者もいる。

しかしWiedenmannによれば、今回の研究で、浅い海のサンゴが発現するタンパク質色素と深い海に生息するサンゴの色素とでは「生化学的、光学的に全く異なっている」ことが分かったのだという。「深い所へ逃げて行くことができるサンゴは多くはなさそうです。水深の浅いサンゴ礁は、サンゴにとって生息しやすい状態にとどめておく必要があるのです」と彼は話す。

翻訳:小林盛方

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 9

DOI: 10.1038/ndigest.2017.170902

原文

Get the glow: the secret to deep-water corals’ radiance
  • Nature (2017-07-05) | DOI: 10.1038/nature.2017.22259
  • Laura Castells

参考文献

  1. Smith, E. G. et al. Proc. R. Soc. B 284, 20170320 (2017).