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ロケット材料が熱い

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 8 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170809b

微細な“けば”つき繊維によって強度を大幅にアップ

現在のロケットエンジンの内部は1600℃という猛烈な温度に達する場合がある。そして未来のエンジンはさらに高温になる必要がある。高温になるほど燃料効率が高まり、より大きな推力が生じ、より大きな積み荷を運べるからだ。火星行き宇宙船や高度な航空機を実現するカギとなる。

炭化ケイ素は期待の高温エンジンに予想される2000℃に耐えられることから、現在の複合材料は、炭化ケイ素繊維を織ったマットを積み重ね、その間を多孔質セラミックスで埋めて作られている。だが、これら既存の複合材料はエンジン内で発生する高圧の下でひび割れを起こす場合がある。繊維同士が滑って、セラミックスから抜けてしまうからだ。

これに対し、ライス大学(米国テキサス州ヒューストン)と米航空宇宙局(NASA)グレン研究センター(米国オハイオ州クリーブランド)のチームがブレークスルーとなり得る新材料を開発、Applied Materials & Interfacesに報告した。表面が微細なマジックテープのように“けば立った”炭化ケイ素繊維で、微毛が互いに絡み合うため、滑りにくく周囲のセラミックスから抜けにくいと考えられる。

この糸を作るため、研究チームはまず、炭化ケイ素の表面にねじれたカーボンナノチューブを成長させ、巻き毛のように突き出させた。次にこの繊維をケイ素の超微細粉末に浸して加熱し、カーボンナノチューブを炭化ケイ素繊維に変えた。このけば立った繊維を透明なゴム状ポリマーに埋め込んで強度を評価した結果、すべすべの糸を使った通常の複合材料と比べて4倍の強度があることが分かった。

論文を共著したNASAの技術者Janet Hurstによると、同チームは現在、この繊維をセラミックス媒質に埋め込んでテストする準備をしている。また、窒化ホウ素繊維でも作りたいと考えている。その方が強く、損傷を及ぼす酸素への曝露から繊維を保護できるからだ。

炭化ケイ素繊維は長さ方向には強いが、横方向に高い圧力がかかるとちぎれる場合がある。だがこの新繊維の場合、柔軟な“けば”がひずみを分散して逃がす効果があるため、破損を避けられるだろうと、コネチカット大学物質科学研究所(米国ストーズ)の所長Steven Suib(今回の研究には加わっていない)は言う。

(翻訳:鐘田和彦)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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