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植物は聞こえている?

植物に音楽を聴かせるとよく育つといった、根拠の甚だ怪しいエセ科学的な主張は何十年も前からある。しかし最近の研究は、ある種の植物が、パイプの中を流れる水の音や昆虫の羽音などを感知できている可能性を示唆している。

この研究で、西オーストラリア大学の進化生物学者Monica Gaglianoらは、Y字を逆さにしたような形の植木鉢にエンドウマメの苗を植えた。それぞれの植木鉢の片方の脚は水を入れた皿か、内部を水が流れるコイル状プラスチックチューブの中に置き、他方の脚は乾いた土の中に置いた。すると根は水が流れるチューブに向かって成長した。

「チューブ内部を水が流れている音しか手掛かりはないのに、水がそこにあることをちゃんと知っている」とGaglianoは言う。だが水のチューブと湿った土のどちらかを選べる状況では、エンドウの苗は後者に根を伸ばした。Gaglianoは、これらの植物は遠くの水を検知するのに音を使うのだが、近くのターゲットに根を伸ばすときには湿度勾配に従うという仮説を立てている。

2017年にOecologiaに報告されたこの研究は、植物が音を検知して解釈できることを示唆した最初の例ではない。2014年には、ロッククレス(シロイヌナズナ属の植物)が、イモムシが葉を食べている音と風による振動を区別でき、昆虫が食事している音の録音を聞かせると毒素を作り出す量が増えることを示した。「植物の反応は見えにくいので、私たちは植物を過小評価しがちだ。だが、葉は極めて高感度の振動検出器であることが分かる」と、論文の筆頭著者でトレド大学(米国オハイオ州)の環境科学者Heidi M. Appelは言う。

植物に音が聞こえている可能性をうかがわせるもう1つの兆候は「振動送粉」という現象だ。ある周波数のハチの羽音が、植物の葯からの花粉の放出を促すことが示されている。

グライフスヴァルト大学(ドイツ)の生物学者Michael Schönerは、「音の振動は何らかの機械的受容器を通じて植物に反応を引き起こすことができるだろう。非常に細い毛のような構造の受容器で、何か鼓膜のような働きをすると考えられる」と言う。

今回の研究は、「例えば植物が昆虫の襲来を仲間に警告する必要がある際に、雑音がこの情報チャンネルを遮断する恐れがあることを示している」と、Gaglianoは指摘する。

翻訳:粟木瑞穂

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 8

DOI: 10.1038/ndigest.2017.170809a