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ガラスの3D印刷の仕方
透明なガラスは、その物理的・化学的性質と美しさゆえに、古くから珍重されてきた。ガラスの製造・加工というと、高温の炉や、汗をにじませながら融けたガラス生地を巧みに成形するガラス吹き職人を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、そのような過酷な作業に従事しなくとも、また、手先が器用でなくても、透明なガラスを作ることができるという。
今回、カールスルーエ工科大学(ドイツ・バーデンビュルテンベルク)のFrederik Kotzらは、一般的なステレオリソグラフィー(光造形)3Dプリンターを使って任意の複雑さの高品質シリカ(石英)ガラス部品を作製する方法を、Nature 2017年4月20日号337ページに報告した(F. Kotz et al. Nature 544, 337–339; 2017)。
Kotzらの手法のカギは、モノマーマトリックス中にシリカナノ粒子を分散させた流体ナノコンポジット、つまり、印刷過程で紫外線によって硬化する分散系の開発にある。Kotzらは、3D印刷した構造体を約1300℃で焼結すると高い光学品質のガラスが得られるよう、ナノコンポジットの成分を念入りに選択した。出来上がったガラス構造体は、印刷時の形状を忠実に再現しており、しかも優れた耐熱性を示した(上図参照)。形状の複雑さは、プリンターの解像度(今回の場合は数十µm)だけで決まるという。
翻訳:三枝小夜子
Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 7
DOI: 10.1038/ndigest.2017.170732