Editorial

フェイクニュースを伝えるマスメディアをあぶり出す

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170637

原文:Nature (2017-03-09) | doi: 10.1038/543150a | Science journalism can be evidence-based, compelling — and wrong

証拠に基づいた説得力のある科学ジャーナリズムは可能だが、それでも誤解することはある。

科学ニュースサイトをランク付けするという試みは論議を呼んでいる。 | 拡大する

American Council on Science and Health/RealClear Media Group

科学ニュースを伝えるウェブサイトの良し悪しを評価した結果と称するインフォグラフィック(情報を視覚的に説明する画像)が3月5日に発表され、科学ジャーナリズムのコミュニティーが大いに歯ぎしりしている。このランキングの作成に協力した米国科学衛生審議会によれば、科学ジャーナリズムは粗悪であり、「ジャーナリズム全体がひどいと言うのなら、科学ジャーナリズムはもっとひどい。一般ジャーナリズムが侵されているバイアスと同様のバイアスに侵されているだけでなく、度を越した扇情主義に陥りやすいという独自の問題もある」(go.nature.com/2mhmupd参照)とされる。

今回の分析に関わったニュース収集サイトRealClearScienceも、「科学報道のかなりの部分は、特定のイデオロギーに基づいたジャンクサイエンスや誇大に宣伝された研究、そして、ほとんど誰も理解できない強烈な専門用語からなる泥沼だ」(go.nature.com/2lrzx8d参照)と一段と踏み込んだコメントをしている。

では彼らは、こうした泥沼から現れる新聞・雑誌の価値を「バイアスや度を越した扇情主義抜きに」どのように判断するのか? 単に、各新聞・雑誌の掲載内容を①証拠に基づいているか、②説得力があるかの2点につき主観的に判断するだけだ。一部の新聞・雑誌にとって、このランキングは予想外のものになっている。多くの購読者数を誇るニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ガーディアン各紙の評価が比較的低いのだ。

これは奇妙なランク付けで、どのレベルでも満足なものとは言えない。同じコンテンツでも、説得力があると感じる読者がいる一方で、退屈だと感じる読者もいるため、読者の関心事項の異なる出版物(例えば、エコノミストとケミストリーワールド)を直接比較するのは極めて不公平なことに思われる。また、そうした出版物には水準に達しない記事が紛れ込むことがあるが、だからといって、その刊行に携わる全ての者をこき下ろすのも同様に不公平だ(これが特に的を射た見方となっているのは、現代の出版物ではオンライン版が広く導入され、コンテンツがかなり薄くなっているからだ)。

「ニュース記事が証拠に基づいているかどうか」の判定基準にも疑問の余地がある。多くのジャーナリストが再現性の危機に直面する科学分野の存在を指摘し、一部の「証拠」の信頼性に疑問を呈するのは当然のことであり、これを追随する動きが研究助成機関と批評家にも広がっている。第一線の科学担当記者は、誌上発表された知見が読者に伝えられるほど十分にロバストなものであることを研究コミュニティーが正式に認めた「しるし」が査読だと一般的に考えてきた。しかし、こうした証拠に基づく報道の信頼性は、研究コミュニティーが報じた証拠の信頼性を超えることはない。そして、誌上発表された論文の一部、特にマスコミの注目を集めた論文に対し、バイアスや扇情主義に陥りやすいと(内々で)苦情を言う科学者は多いと考えられる。このことは、科学者(と科学者以外の)ブロガーおよびブログ以外の形式による「発表後の論文批評」の興隆が非常に有益だと見なされるようになった理由の1つになっている。

今回のインフォグラフィックに列挙された出版物の大部分では、問題のある研究のやり方(統計を用いた情報の探り出しや統計的検出力の不足など)に関する記事の占める割合が増えている。科学とマスコミ報道の関係は、決して単純なものではなく、学者もマスコミ関係者もこのことを忘れてはならない。

(翻訳:菊川要)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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