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カエルで蛍光発光を初めて確認

南米に生息するブチアマガエルは、通常の光の下では、赤みがかった黄緑色に茶色っぽい斑点という比較的地味な体色をしている。ところが、紫外光を照射すると明るい緑色の蛍光を放つことを、アルゼンチン自然科学博物館の研究チームが発見し、2017年3月13日に発表した(C. Taboada et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA http://doi.org/b364; 2017)。

蛍光現象は、短い波長の光を吸収した物質がそれより長い波長の光を放つ現象のことだ。この現象は陸生動物では珍しく、両生類ではこれまで知られていなかった。また研究チームは、この蛍光カエルが他の動物とは異なる蛍光分子を利用していることも報告した。

蛍光を発するオスのブチアマガエル。まるでナイトライトのようだ。 Credit: JULIÁN FAIVOVICH AND CARLOS TABOADA

「蛍光発光」は、生物が化学反応によって光を生成し放射する「生物発光」とは異なる現象だ。サンゴ、魚、サメなど、多くの海洋生物が蛍光を発するが、陸上で蛍光発光することが知られている動物はオウムや一部のサソリくらいで、非常にまれである。動物が蛍光発光能を持つ理由はよく分かっていないが、コミュニケーションやカモフラージュのためとの説がある。

ブチアマガエルはビリベルジンという色素を持っている。ビリベルジンは胆汁色素の一種で、単独で両生類の組織や骨を緑色に変えるが、一部の昆虫ではビリベルジンと結合するタンパク質がかすかな赤色蛍光を発することが知られていると、ブエノスアイレス大学(アルゼンチン)の爬虫両生類学者で論文共著者のCarlos Taboadaは言う。そのため、研究チームは当初、赤色蛍光の発見を期待していた。ところが、アルゼンチンのサンタフェ付近で収集したブチアマガエルに紫外光を照射すると、赤色ではなく緑色の強い蛍光発光が確認された。

この緑色蛍光をもたらしたのは、このカエルのリンパ組織、皮膚、腺分泌物中に存在する3種の分子であることを、研究チームは突き止めた。彼らがハイロインと名付けたこれらの分子(hyloin-L1、hyloin-L2、hyloin-G1)は、環状構造と炭化水素鎖を持っている。動物の既知の蛍光分子の中では異色だが、植物では非常によく似た分子が見つかっていると、サンパウロ大学(ブラジル)の化学者で論文共著者のNorberto Peporine Lopesは話す。

ブチアマガエルの蛍光分子は、満月の約18%に相当する可視光を発して輝く。このカエルの視覚系は謎に包まれているため、Taboadaは、このカエルがこの蛍光を見ることができるかどうかを明らかにしたいという。

「大変面白いと思います」と、ニューヨーク市立大学バルーク校(米国)の海洋生物学者David Gruberは言う。Gruberは、2015年に共同研究者と共に、ウミガメの一種タイマイの蛍光発光を発見している(D. F. Gruber and J. S. Sparks Am. Mus. Novit. 3845, 1–8; 2015)。蛍光の生態学的機能や行動機能を含めて、「今回の発見で、新たな疑問が次々と生じています」 と彼は言う。

翻訳:藤野正美

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 6

DOI: 10.1038/ndigest.2017.170614

原文

First fluorescent frog found
  • Nature (2017-03-16) | DOI: 10.1038/nature.2017.21616
  • Anna Nowogrodzki