Editorial

冥王星の復讐

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170534

原文:Nature (2017-02-23) | doi: 10.1038/542392b | Pluto could be staging a comeback — and it’s not alone

惑星に分類される天体の数を大幅に増やすという提案がなされ、数々の興味深い論点を提起している。

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NASA/JHUAPL/SwRI

英国チェシャー州マックルズフィールドにあるジョドレルバンク天文台には、美しい機械式の太陽系儀が天井からつり下げられており由緒あるもののように見える。しかし、この太陽系の模型は、2013年に設置された非常に新しいものだ。なぜ新しいものなのか。この太陽系儀自体が大きなヒントになっている。この太陽系儀を見上げる場所に集まった子どもたちには、太陽系の惑星が8つ描かれた課題シートが与えられ、それぞれの名前を記入するようになっている。2006年に国際天文学連合(IAU)が新しい惑星の定義を決定して以降、冥王星は描かれていない(若い読者のために説明すると、年長の読者は、9つの惑星が太陽のまわりを回っていると学校で習ったのだ)。

冥王星の格下げは、科学者全員が受け入れたものではなかった。そしてこのほど、一部の科学者が冥王星を惑星として復活させる提案を作成した(提案した科学者らは、米国NASAが冥王星に飛ばした「ニューホライズンズ」探査機に関係しているのだが、これは決して偶然ではない。ニューホライズンズは計画時には惑星探査機だったのだが、2015年に冥王星に到達した時には天体探査機となっていた)。ジョドレルバンク天文台の職員は、この新しい太陽系儀が時代遅れになるような提案を恐れていることは間違いない。だが、この新しい太陽系儀の下に集まっていた生徒たちも、この提案のことを心配すべきだと思う。なぜならば、この提案が採択されれば、課題シートに書かなければならない太陽系内の惑星の数が100を超えることになるからだ。

この提案は、2017年3月に米国テキサス州ウッドランズで開催された月惑星科学会議で発表されたが、事前にインターネット上で発表されていた。その目的は、大ざっぱに言うと、惑星かどうかの分類を天体の宇宙空間での位置ではなく、天体内部の地球物理学的性質に基づいて行うことにある。この提案の著者は、IAUが惑星の定義を変更したことで、想定外の影響が出ていると話す。つまり、一般市民がかつてほど冥王星を探査の対象として面白いと思わなくなったというのだ。この新提案によれば、惑星とは「恒星より小さな質量の天体で、核融合が起きたことがなく、軌道パラメーターにかかわらず三軸楕円体として記述することが適切な回転楕円形状になるために十分な自己重力を有するもの」あるいは「宇宙空間に存在する、恒星より小さな丸い天体」とされる。

ざっと見たところ、この定義では、月が惑星の仲間入りをするのは当然のことと思われる。それ以外にも数多くの衛星が惑星に分類されて、太陽系の惑星が大幅に増えることになる。これがどの程度真剣な提案なのかは現時点で明確になっていないが、大きな利点があると考えられる。学校に通う子どもたちは、地球の周辺の惑星の名前を覚えるためにさらなる努力を求められるかもしれないが、人類が足跡を残したもう1つの「惑星」についても学ぶことになると考えられるからだ。

(翻訳:菊川要)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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