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空気清浄網戸

汚染物質をとらえるナノファイバーを使った新しい網戸によって、スモッグに煙る都市の住民が一息つくことができるようになるかもしれない。このナノファイバーは窒素を含むポリマーでできており、「ブロー紡糸」という方法で網戸に吹きつけられる。ポリマー溶液の小さなしずくが気流によって噴霧の中に広がり、非常に薄いナノファイバーの層が形成される。

このほど、スタンフォード大学(米国カリフォルニア州)と清華大学(中国・北京)の科学者たちは、通常の網戸を通過して肺に達してしまう有害な粒子状物質の90%以上を除去できるブロー紡糸ポリマー(一般にゴム手袋やテントに使われている)を開発し、Nano Letters 2017年2月号に報告した。汚染物質吸着ナノファイバーは、ロールから毎分1m弱の速度で引き出される柔軟なナイロンメッシュに対して吹きつけられた。研究チームはまた、金属被膜のメッシュにもナノファイバーを吹きつけ、大量の粒子状物質を吸着した後に、膜をティッシュでぬぐって調べた。

スモッグのひどい北京で12時間の実地試験を行った結果、ポリアクリロニトリル・ナノファイバーをコーティングしたこの網戸は、肺がんや心臓病の原因となり得る有害な粒子状物質の90%を除去し、新風を吹き込んだ。

翻訳:鐘田和彦

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 5

DOI: 10.1038/ndigest.2017.170507b