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8番目の大陸「ジーランディア」を探る地質学者たち

一部の科学者は、ニュージーランド(左が南島)はこれまで知られていなかった大陸の一部であると考えている。 Credit: NASA/JSC

一部の地質学者によると、南西太平洋には、その大部分が波の下に隠れているが大陸と呼ばれるべき領域があるという。彼らはこの領域を「ジーランディア(Zealandia)」と呼んでいる。

海の中の大陸地殻
一部の研究者は、ジーランディアを新たな大陸と認めるべきだと考えている。

ニュージーランド、オーストラリア、ニューカレドニアの科学者チームは今回、地球物理学的データから、ニュージーランドやニューカレドニアを含む500万km2に及ぶ領域は1つの大陸地殻を構成していて、地質学的に見てオーストラリア大陸とは別の大陸であると考えられるとの主張をまとめ、GSA Today 2017年3/4月号に報告した1(「海の中の大陸地殻」参照)。

ニュージーランドの研究機関GNSサイエンスのダニーデン研究センターに所属する地質学者で、今回の研究チームを率いるNick Mortimerは、「地球の海の栓を抜いて水をなくすことができれば、ニュージーランドはとっくの昔に大陸として認知されていたでしょう」と話す。

しかし、大陸を公式に認定する国際機関は存在しないため、研究者たちは、十分な数の同僚がジーランディアを大陸と認めてくれることを期待するしかない。同僚が認めてくれなければ、彼らの提案は数ある理論の1つのままであり、子どもたちが地理の授業で学ぶ内容を変えることなど到底できない。

GNSサイエンス本部(ロワーハット)の鉱物地質学者Patricia Duranceは、「今回の結果は、今日の地質学的大陸の定義をどこまで適用できるか、あるいは適用するべきかについて、再考を促しています」と言う。

断片の寄せ集めではない

Mortimerらは10年以上前から、講演や一般向けの記事や書籍でジーランディアの存在を主張してきた。今回の論文は、これまでで最も専門的な内容でつづられている。彼らはこの論文で、ジーランディアは約1億年前にゴンドワナ超大陸から分裂し始めたと説明している。

この分裂によって、ジーランディアは独立の大陸となると同時に、地殻が引き伸ばされて薄くなり、海中に沈みはじめた。今日ではその大部分が海中にあり、海面上に出ているのは、ニュージーランドやニューカレドニアなど全体の約6%だけである。

Mortimerによると、人工衛星の観測データに基づく地球の重力場地図を見ると、ジーランディアはオーストラリア北東部の海岸付近からニュージーランドの島々をはるかに越えたところまで広がり、一貫した地理的特徴を持つことがはっきり分かるという。また、ジーランディアの近くの海台(海底の高原状の隆起部)が黒っぽい火山岩からできているのに対して、ジーランディアは白っぽい大陸地殻からできていることが、海底試料の分析から分かっている。こうした事実は、ジーランディアが別々の大陸地殻の断片の寄せ集めではなく、一貫した構造を持っていることを示しているように思われる。

実をいうと、大陸の定義として広く受け入れられているものはない。例えば、「大陸とは何か?」と質問すると、地理学者と地質学者とでは異なる返答をする。地理学者はヨーロッパ大陸とアジア大陸を独立の大陸として見るが、地質学者はユーラシア大陸という1つの大陸として見るのだ。聖フランシスコ・ザビエル大学(カナダ・アンティゴニッシュ)の地質学者Brendan Murphyは、「この論文で特に良いと思ったことの1つは、『大陸』という極めて基本的な用語が恣意的で一貫性のない使われ方をしているという事実に、人々の注目を集めたことです」と言う。

研究チームは、ジーランディアが他の大陸[ユーラシア大陸(アジア大陸とヨーロッパ大陸)、アフリカ大陸、南極大陸、オーストラリア大陸、北米大陸、南米大陸]と同等の大陸として認知されることを目指しているが、苦しい戦いを強いられることになるだろう。モナッシュ大学(オーストラリア・メルボルン)の地質学者Peter Cawoodは、「ジーランディアが大陸であると主張することは切手収集に似ています。興味のない人には『だから何?』としか思われません」と言う。

それでもMortimerはこの新大陸の名称が何であれ、その研究は生物地理学者にとってニュージーランドに固有の動植物が生じてきた過程を解明するのに役立ち、地質学者にとって大陸地殻の変形機構を理解するのに役立つはずだと信じている。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 4

DOI: 10.1038/ndigest.2017.170404

原文

Geologists spy an eighth continent: Zealandia
  • Nature (2017-02-16) | DOI: 10.1038/nature.2017.21503
  • Alexandra Witze

参考文献

  1. Mortimer, N. et al. GSA Today (2017).