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「コモン・ルール」最終版は研究者寄りに

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170413

原文:Nature (2017-01-26) | doi: 10.1038/nature.2017.21330 | Controversial patient-consent proposal left out of research-ethics reforms

Sara Reardon

ヒト試料を扱う研究と臨床試験で米国政府が助成するものに適用される規則「コモン・ルール」。このたびの改訂では、焦点となっていた被験者保護の拡充が見送られ、プライバシーに関する懸念が広がっている。

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luckyvector/iStock / Getty Images Plus/Getty Images

患者プライバシー擁護派にとっては打撃だった。米国政府は、科学者が生物試料を後の研究で使用する際、その試料が匿名化されている場合であっても事前に提供者の同意を得なければならない、という規則の制定を計画していたが、それを断念したのだ。

米国保健社会福祉省(DHHS;ワシントンD.C.)は2015年9月に、「コモン・ルール」(研究における被験者保護および臨床試験の実施で適用される一連の連邦規則)について綿密な見直しを行い、改訂案を提示した。だが、2017年1月18日に公開された最終版には、2015年9月の改訂案に書かれていた被験者同意に関する規定が含まれていなかったのだ。

今回の改訂の大半は、この規制が適応される研究者の重荷を減らすことを意図している。例えば、「科学者たちは研究が行われるあらゆる組織で倫理委員会から個別に承認を得なければならない」という要件も削られた。この改訂により、ある研究が複数の承認を必要とするかどうかを政府機関が決めることができる。

米国科学工学医学アカデミー(NASEM)は2016年6月に発表した報告書で、2015年9月の改訂案を攻撃した。政府の計画は「検討不足かつ明確さを欠いており、十分なものとなっていない」と述べた上で、計画の撤回を勧告していた。

コモン・ルールの最終版は、増大する研究負担に対する科学者たちの不安に政府が耳を傾けたことを示していると、バンダービルト大学(米国テネシー州ナッシュビル)の生命倫理学者Ellen Claytonは言う。「私は自分のボスの部屋へ行って、喜びを分かち合いました。わくわくしています」。

ただ、改訂された規則でもやはり、研究に全ゲノム塩基配列解読が含まれる場合には、被験者にそのことを伝えることを義務付けている。提供した試料から身元が明らかになる可能性があるからだ。

しかし、同意要件を削除する決定がなされたことは、「the Citizens’ Council for Health Freedom(健康の自由を守るための市民会議)」(米国ミネソタ州セントポール)の会長Twila Braseを失望させた。この協議会は、幼児疾患のスクリーニングに使われた血液スポットをヒト被験者に分類して、研究にそのスポットを使用する際には同意を必要とするよう運動してきた。

最終版では、被験者同意書に、それぞれの研究の説明とともに、リスクと利益も明記することを求めている。また、いくつかの連邦政府の資金による臨床試験ではオンラインでそれらの同意書を公開することが要求されている。しかし、これらの規則は連邦政府から資金を提供されていない臨床試験には適用されない。

政府以外から資金提供を受けている臨床試験にコモン・ルールを適用することは、不必要な負担になるだろう、とHHSの臨床試験保護部門の部長Jerry Menikoffは述べる。政府予算を受け取るほとんどの組織は、どこが資金提供元であれ、全ての臨床試験に規則を適用する、と彼は言う。

ワシントンD.C.の消費者擁護団体パブリック・シチズンの健康研究部門長Michael Caromeは、その決定は遺憾だと語る。「連邦政府によって資金を提供されていようといまいと、どんな臨床試験においても被験者は保護されるべきであると私たちは考えます」。

(翻訳:古川奈々子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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