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6大陸の蜂蜜からネオニコチノイド系農薬を検出

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2017.171207

原文:Nature (2017-10-05) | doi: 10.1038/nature.2017.22762 | Controversial pesticides found in honey samples from six continents

Rachel Cernansky

ネオニコチノイド系農薬のミツバチへの影響について、新たな調査結果が報告された。

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David Blaikie/Moment/Getty

ネオニコチノイド系農薬は、一部の研究でミツバチの健康に悪影響を及ぼす可能性が示唆されている化学物質だ。このほど、標準化した手法を用いて世界各地の蜂蜜に含まれるこの農薬を定量する初の試みの結果がScience 2017年10月6日号に発表された1。報告によると、試料の75%からある程度の量のネオニコチノイドが検出され、試料の半数近くは、これまでの研究からミツバチの脳機能を損なったりコロニーの成長を遅らせたりすると考えられる濃度以上であったという。また、試料の45%に2種類以上のネオニコチノイドが含まれていた。

論文の筆頭著者であるヌーシャテル大学(スイス)の生物学者Edward Mitchellは、「蜂蜜からネオニコチノイドが検出されたことは、ある意味、意外ではありませんでした」と言う。「今回の研究が画期的なのは、同一のプロトコルを使っている点です。これにより、世界各地のミツバチのネオニコチノイドへの曝露の現状を正確に把握することができました」。

ネオニコチノイド系農薬がミツバチの健康に影響を及ぼしているかどうか、影響を及ぼしているならどのような仕組みであるかを巡っては長年論争が続いているが、今回の研究は論争に新たな材料を提供するものだ(Nature ダイジェスト 2016年10月号「ネオニコチノイド系農薬とハチ減少に新たな証拠」参照)。これまでの研究では、ネオニコチノイドへの曝露がミツバチの栄養状態を低下させたり2、免疫機能を低下させたりすることが示唆されている3。2017年6月にScienceに発表された論文でも、ネオニコチノイドはミツバチが越冬できる可能性を低下させ、特に女王バチの生存を脅かすため、繁殖に影響を及ぼす可能性があるとされている4

今回の論文の著者らは、世界各地のミツバチのネオニコチノイド系農薬への曝露の規模を評価するため、市民科学プロジェクトを通じて南極大陸を除く全6大陸の198地点から蜂蜜を集めて、広く使用されている5種類のネオニコチノイド系農薬がどのくらい含まれているかを調べた。少なくとも1種類が検出された試料の割合が最も高かったのは北米で集められた蜂蜜で、86%だった。以下、アジアが80%、欧州が79%と僅差で続いている。

社会性昆虫の研究をしているヨーク大学(カナダ・トロント)の生物学者Amro Zayedは、太平洋の真ん中や西アフリカの沿岸の島々などの辺ぴな地域の蜂蜜にまで汚染が広がっていたのは意外だったと言う。今回の発見は、世界中のミツバチが何世代にもわたりネオニコチノイド系農薬に曝露され続けていることを示している、と彼は言う。ミツバチの主食は蜂蜜であるため、汚染の広がりは非常に心配だ。

一方、ネオニコチノイド系農薬はキャノーラやコムギなどの主要作物や家庭菜園にも広く使用されているため、広い範囲で検出されたことは意外ではないとする声もある。ダルハウジー大学(カナダ・ハリファックス)の昆虫学者Chris Cutlerは、「そのとおりに思います。ネオニコチノイド系農薬への曝露は今後も長く続くでしょう。けれども、危険については別問題です」と言う。「ネオニコチノイド系農薬が検出されたからといって、問題があるとは限りません」。

ネオニコチノイド系農薬を巡る論争の多くは、「ミツバチが長期にわたって低濃度の農薬に曝露することは、どのくらい問題なのだろうか」という問いに関係したものだ。花粉媒介者について研究しているグエルフ大学(カナダ・オンタリオ州)のNigel Raineは、「農薬がミツバチに及ぼす影響を評価する際には、実際に野外でどの程度曝露しているかが問題になります。この点が、議論を大きく左右するのです」と言う。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Mitchell, E. A. D., Mulhauser, B., Mulot, M., Mutazbazi, A., Glauser, G. & Aebi, A. Science 358, 109–111 (2017).
  2. Mogren, C. L. & Lundgren, J. G. Sci. Rep. 6, 29608 (2016).
  3. Brandt, A., Gorenflo, A., Siede, R., Meixner, M. & Büchler, R. J. Insect Physiol. 86, 40–7 (2016).
  4. Woodcock, B. A. et al. Science 356, 1393–1395 (2017).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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