細胞をつなぐナノチューブ
1999年に報告された、細胞から細く長く伸びるワイヤー状の管。これまで評価されていなかったこの細胞間連絡は、がん細胞や細菌にも利用され、それらが広がるのを助けている可能性が出てきた。
拡大するKARINE GOUSSET/CHIARA ZURZOLO/PASTEUR INSTITUTE
Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2017.171219
原文:Nature (2017-09-21) | doi: 10.1038/549322a | How the Internet of cells has biologists buzzing
自分はショウジョウバエの精巣のことを隅から隅まで知っていると、ミシガン大学(米国アナーバー)の発生生物学者、山下由起子は思っていた。ところが、この器官について一連の実験を行った彼女は、得られた結果にひどく困惑した。5年前のことだ。彼女の研究チームはそれまで、ショウジョウバエで精子の供給を維持する仕組みを調べており、この過程で特異的なタンパク質群の生産を担う特定の細胞群を遺伝子操作していた。ところが、遺伝子操作した細胞内で生産された一部のタンパク質が、全く異なる細胞群に「テレポート」したように見えたのだ。