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Ia型超新星の発生プロセスは2つ?

伴星(右)から物質を吸い上げる白色矮星(左)の想像図。 Credit: NASA

Ia型と呼ばれる超新星は、絶対的な明るさがほぼ一定なので、天文学者たちは「標準光源」として使っている。つまり、Ia型超新星の見かけの明るさから宇宙論的な距離を測定することができ、これを基に宇宙の加速膨張も発見された。しかし、Ia型超新星がどのようにして発生するかについては、現在も議論が続いている。2つのシナリオが有力視されているが、そのうち、伴星から白色矮星への物質の降着で生じるという旧来のシナリオを裏付ける特徴的な観測結果が今回初めて得られた。もう1つのシナリオを支持する観測結果も多く、発生プロセスは2つあるという見方が強まっている。

今回の研究を行ったのは、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(米国)の天文学者Griffin Hosseinzadehらで、論文は2017年6月27日にarXivプレプリントサーバーに投稿され(arXiv: 1706.08990)、Astrophysical Journal Letters 2017年8月20日号に掲載された。

Ia型超新星は長く「標準光源」として使われている。遠方のIa型超新星を観測することにより、宇宙の膨張速度は加速していることが1998年に示され、暗黒エネルギーが存在する証拠にもなった。この成果は2011年のノーベル物理学賞を受賞した(Nature ダイジェスト 2011年12月号「宇宙の加速膨張の発見に物理学賞」参照)。

しかし、Ia型超新星爆発がどのようにして起きるかというシナリオは、まだ明確になっていない。Hosseinzadehは、「科学者たちが、この宇宙論の道具を完全に理解していないという事実は恥ずかしいことです。20世紀の最大の発見の1つはIa型超新星に基づいているわけですが、私たちはそれが本当は何なのかを知らないのです」と話す。

かつては、Ia型超新星は流れ作業で一律に作られる花火のようなもので、みな同じ仕組みで生じていると考えられていた。しかし、1990年代になってIa型超新星の実際の明るさにはばらつきがあることが分かった。だが、このばらつきは明るさの減衰速度を基にした経験則でよく補正できることが分かり、宇宙の加速膨張の発見につながった。

それでも、「標準光源」が互いにいくらか異なっているように見えるという事実は、天文学者たちにとって懸念材料だ。ノートルダム大学(米国インディアナ州)の天文学者Peter Garnavichは、「Ia型超新星の明るさのばらつきを補正できても、ばらつく根本的な理由は分かっていません。宇宙の膨張速度を1%の精度で測定しようと試みるとき、こうした差異があると、私たちはIa型超新星を誤って理解しているのではないかと不安になります」と話す。

2つのシナリオ

天文学者たちは、Ia型超新星爆発を起こすのは白色矮星だと確信している。白色矮星は、比較的軽い星が進化の最終段階でたどり着く、地球サイズの小さな星だ。しかし、何が白色矮星を爆発に至らせるかは、はっきりとは分かっていない。白色矮星は安定していて、自ら爆発することはないからだ。爆発過程をスタートさせるのは伴星だと考えられている。伴星は、太陽に似た星(主系列星)、巨星などの場合の他、もう1つの白色矮星である可能性もある。

Ia型超新星爆発を説明する有力なシナリオは2つあり、伴星のタイプが異なっている。伴星が主系列星や巨星であれば、やがて白色矮星は伴星から物質を徐々に吸い上げるだろう。この結果、白色矮星の質量は徐々に増加し、その重力による収縮、温度・密度の上昇により、ある限界質量で熱核融合反応の暴走が始まる。一方、伴星も白色矮星だったら、2つの白色矮星の連星は、重力波を放出しつつ、らせん状の軌道を描きながら互いに近づき、合体して限界質量を超え、熱核融合反応で爆発するだろう。この場合、超新星の明るさはいくらかばらつく可能性がある。

研究者たちは、この2つのシナリオのどちらが正しいかを知るため、生まれたばかりの超新星を探している。その理由の1つは、前者のシナリオで生じた超新星は、爆発後間もなくにはっきりした証拠を示すはずだからだ。爆発で外側へ放出される物質が、まだ損なわれていない伴星にぶつかって明るく輝くはずなのだ。一方、白色矮星同士の合体によって生じた超新星では、2つの白色矮星は完全に破壊されてしまうだろう。

天文学者たちが近年見いだした証拠は、2番目のシナリオを支持するものが多かった。Hosseinzadehらの研究チームは今回初めて、伴星からの物質を吸い上げた白色矮星が爆発した結果、その放出物が伴星に衝突したとみられる明瞭な観測結果を得た。

グローバル望遠鏡ネットワーク

今回の発見の最初の兆候が見つかったのは2017年3月10日だった。アリゾナ大学(米国トゥーソン)の天文学者で、今回の論文の共著者であるDavid Sandはこの日、1つの超新星が、地球から1690万パーセク(5500万光年)離れた渦巻銀河NGC 5643の周辺部に現れたことに気付いた。彼は、毎晩約500個の銀河を走査する超新星観測プロジェクト「DLT40超新星サーベイ」のデータを調べていて、この超新星を発見した。

Sandは、彼が見つけたものが星の爆発であり、未知の小惑星ではないことを確かめるため、急いで画像をもう1枚撮影した。彼は数分以内に、ラス・クンブレス天文台グローバル望遠鏡ネットワークに警報を出すべき事態であることを悟った。同ネットワークは、世界の8カ所にある18基の望遠鏡で作る観測ネットワークで、天体を24時間連続して観測することができる。

今回の超新星は、超新星爆発の始まりから1日以内、おそらく、数時間で発見されたとみられるという。HosseinzadehとSandらは、最初の5日間は約6時間ごとに、その後も爆発の40日後まで毎晩1回、この超新星を観測し、光度の変化を調べた。その結果、爆発から約5日の間に、紫外光の明るさの一時的な上昇が起こっていたことが分かった。超新星から放出された物質が伴星(太陽の約20倍の直径の準巨星と推定される)にぶつかって光を放ったためとみられる。

「これは、標準的なIa型超新星における伴星への衝突現象の、これまでで最も良い証拠です」とGarnavichは話す。Sandはアリゾナ大学の取材に対し、「おそらく、Ia型超新星の発生プロセスには2種類あるのでしょう。今後の研究の目標は、どちらがよりありふれているのかを見いだすことです」と話している。

Hosseinzadehは、「私たちは、使い方を知ってはいるが、働く仕組みを知らない道具を持っているようなものです。使っている道具の物理的な仕組みを理解することは、やみくもに使っているだけよりもずっと良いはずです」と話す。

翻訳:新庄直樹

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 11

DOI: 10.1038/ndigest.2017.171112

原文

Supernova’s messy birth casts doubt on reliability of astronomical yardstick
  • Nature (2017-08-24) | DOI: 10.1038/nature.2017.22066
  • Shannon Hall