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「鎧竜」の鋭い突起はディスプレイ用だった?

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2017.171106

原文:Nature (2017-08-26) | doi: 10.1038/nature.2017.22511 | Dinosaurs’ spiky armour may have been status symbol

Traci Watson

保存状態が極めて良好な曲竜の新種の化石について軟組織の詳細な分析が行われ、この恐竜が、派手な棘状の突起を仲間へのディスプレイとして使っていた可能性が示唆された。

ボレアロペルタ(Borealopelta markmitchelli)の化石。 | 拡大する

Royal Tyrrell Museum of Palaeontology, Drumheller, Canada

ジュラ紀から白亜紀にかけて生息した草食恐竜に、全身が分厚い装甲で覆われた「曲竜類」と呼ばれる一群がいた。鎧を身にまとっているようであることから「鎧竜」とも呼ばれるこの恐竜には、鋭い突起を持つものも多く、こうした構造は、腹をすかせた肉食恐竜の攻撃から身を守るのにうってつけであるように見える。ところが、新たに発見された保存状態の極めて良好な曲竜化石の特徴は、そうした棘状の突起が主に配偶相手やライバルに向けたディスプレイに使われていた可能性を示唆していた。

2011年にカナダのアルバータ州で見つかったこの化石は、曲竜類に属するノドサウルス類の新属新種であることが分かり、ボレアロペルタ(Borealopelta markmitchelli)として2017年8月3日付でCurrent Biologyに記載された1。論文の著者である王立ティレル古生物学博物館(カナダ・ドラムへラー)の古脊椎動物学者Caleb Brownによれば、ボレアロペルタの化石に見られる特徴的な突起の構造は、レイヨウなどの現生ウシ科動物の角のものに近いという。これらの動物では、角が防御とディスプレイの両方に使われていることから、彼は「これらの突起は、仲間に誇示するための看板だった可能性があります」と説明する。Brownらはさらに、この化石標本に色素が残されていることを見いだし、この恐竜の体色パターンについても手掛かりを得た。

曲竜類の化石はこれまでにも数多く見つかっているが、生きていたときの突起のサイズに関しては、情報はわずかしか得られていない。というのも曲竜の装甲は、皮骨板とそれを覆うケラチン質の柔軟な組織からなるが、こうした軟組織は化石記録として保存されることが滅多にないからだ。そのため、ケラチン質の覆いの厚さや多様性については長く不確かなままだった。

しかしその状況は、ボレアロペルタの化石が発見されたことで一変する。前期白亜紀(1億1000万年前)に生息していた全長5.5m、体重1300kgと推定されるこの曲竜の標本には、表皮を形作る軟組織が、頭部から尾の付け根に至るまで広範囲にわたり、立体構造を維持したままほぼ完全な状態で保存されていたのである。Brownらが、体の各部位の皮骨とケラチン質の覆いの両方を詳細に調べたところ、胴体や尾の付け根では小さな突起の並んだ皮骨板が薄いケラチン質の鱗で覆われていたのに対し、首から肩にかけてはより大きな突起が分厚いケラチン質の尖った鞘に覆われていた。特に、両肩から横に突き出た牙のような棘状の突起では、その長さの3分の1をケラチン質の鞘が占めていたという。

この恐竜の全身の傾向として、皮骨板の突起が大きいほどケラチン質の鞘は厚く、Brownによると、こうしたパターンは現生のウシ科動物などの角でよく見られるという。現生動物では、こうしたパターンの角は仲間に合図を送ったり敵から身を守ったりするのに使われている。

魅せる装甲

ボレアロペルタの想像図。今回の化石標本の軟組織からは色素も検出されており、その分析からは、この恐竜の体色が赤褐色で、「カウンターシェイディング」(背部が暗くて腹部が明るい)と呼ばれる隠蔽色を有していたことが示唆された。一方で、両肩から突き出た大きな棘状の突起は白っぽい色をしていたと考えられ、Brownらは、こうした色のコントラストもディスプレイ説を裏付けていると述べている1。 | 拡大する

Royal Tyrrell Museum of Palaeontology

ボレアロペルタの最も目立つ装飾である両肩から突き出た大きな突起は、現生動物の角と同様、体の前方に位置しており、これらがディスプレイ用であったことが窺える。2頭のボレアロペルタが対峙した際には、この大きな棘が互いの目に飛び込んできたことだろう。

得られた一連の情報は、ボレアロペルタの派手な突起の進化が、社会的コミュニケーションの必要性によって駆動されたことを示唆している。現生動物の角さながらに、ボレアロペルタの突起も、ライバルに対する威嚇ディスプレイや潜在的な配偶相手に対する求愛ディスプレイ、もしくはその両方に使われていた可能性がある。

メリーランド大学(米国カレッジパーク)の古脊椎動物学者Thomas Holtzは、「恐竜の装甲に、損傷を和らげる以上の意味があることを示す好例です」と、Brownらが導き出した結論の合理性にうなずく。

また、ジャクソンビル州立大学(米国アラバマ州)の古脊椎動物学者Michael Burnsも、ボレアロペルタの標本からは「信じられないほどさまざまなこと」が学べると評価する。彼は、この標本は、装甲のパターン形成や進化の道筋を解明するのに役立つとしながらも、まだ1個体分のデータしかないため、この曲竜の棘状の突起が配偶行動に役割を持っていたという解釈は推測の域を出ないと話す。

Brownも、自らの考えが決定性に欠けることは認めている。「同じくらい保存状態の良い化石が他に見つかれば、今回の結論を裏付けることにつながるでしょう」と彼は語る。「でも、ボレアロペルタに匹敵するほどの化石を見つけられる幸運に恵まれるまでには、長い時間を要する可能性があります」。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. Brown, C. et al. Curr. Biol. 27, 2514–2521 (2017).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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