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脳の幹細胞がマウスを若返らせる

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2017.171014

原文:Nature (2017-07-27) | doi: 10.1038/547389a | Brain’s stem cells slow ageing in mice

Sara Reardon

幹細胞移植により老化が遅くなり、寿命が延びることが報告された。

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Tetra Images/Getty

脳の幹細胞は寿命を延長させ老化を遅らせるために非常に重要な働きをしているかもしれない。Nature 2017年8月3日号52ページに発表された論文1によれば、ホルモンやその他のシグナル伝達分子を作り出す脳領域である視床下部に存在する幹細胞が、中齢マウスで低下しつつある脳機能や筋肉強度を回復させる可能性があるという。

これまでの研究で、視床下部と老化の関連が示されてきた。視床下部は炎症や食欲など多くの生体機能に関わっており「それは理にかなっている」と、この論文の責任著者であるアルバート・アインシュタイン医科大学(米国ニューヨーク)の神経内分泌学者Dongsheng Caiは言う。

Caiらは、マウスが老いるにつれて視床下部の幹細胞が消失することを複数のマウスモデルで見いだした。そこで、マウスの視床下部にウイルスを注入して幹細胞を破壊したところ、記憶、筋肉強度、持久力、運動の協調が低下し、老化様の生理学的変化が促進されることが観察された。また、同齢の未処置のマウスよりも早期に死亡した。

次に研究チームは、新生仔マウスの視床下部から得た幹細胞を中齢マウスの脳に注入した。4カ月後にこれらのマウスを調べると、同齢の未処置のマウスよりも認知および筋肉の機能が優れていた。また、幹細胞を注入したマウスは、寿命も平均で約10%延長した。

Caiらは、脳の幹細胞が、遺伝子発現の調節を助ける「マイクロRNA」と呼ばれる分子を脳脊髄液中に放出することを見いだした。中齢マウスの脳にこれらの分子を注入すると、認知力低下と筋肉変性の遅延が観察された。

今回の知見は加齢研究における画期的な成功だと、ワシントン大学(米国ミズーリ州セントルイス)で加齢に関する研究を行う今井眞一郎は称賛する。次なるステップは、幹細胞を老化の他の生理的メカニズムと結びつけることだろうと彼は言う。さらに今井は、脳幹細胞から放出されるマイクロRNAが血流中に入ることができるかも知りたいと話す。もしそうであれば、血流が全身にそれらを運ぶだろう。

Caiは、産生された何千ものタイプのマイクロRNAのうちのどれが老化に関わっているかを突き止めようとしていると述べる。また彼らは、同様のメカニズムが非ヒト霊長類でも存在するかどうかも調べたいと考えている。

(翻訳:古川奈々子)

参考文献

  1. Zhang, Y. et al. Nature 548, 52–57 (2017).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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