Editorial

正確な周期で電磁波を発する天体

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2017.171037

原文:Nature (2017-07-06) | doi: 10.1038/547005b | Pulsars still dazzle after 50 years

パルサーが発見されて50年になる。この天体が科学的に価値のあることを示す証拠が今も次々と報告されている。

ジョスリン・ベル=バーネルは、パルサーを発見した当時、ケンブリッジ大学(英国)の大学院生としてアントニー・ヒューイッシュの下で学んでいた。写真は1968年、マラード電波天文台にて撮影されたもの。 | 拡大する

Daily Herald Archive/SSPL/Getty Images

自然がもたらす現実は、自分たちが望むよりも雑然としていて美しくないことが多く、そのことは、科学者自身が分かりすぎるほど分かっている。しかし、稀にではあるが、宇宙からのうれしい贈り物がある。その1つが50年前のパルサーの発見だった。パルサーは、極めて正確に「時を刻む」星であり、その発見から数十年間に天文学者はパルサーを使って重力を検証し、深宇宙を探索した。また、パルサーをもとにして未来の全地球測位システム(GPS)が作り出される可能性もある。

パルサーを初めて検出したのはジョスリン・ベル=バーネルだ。マラード電波天文台(英国ケンブリッジ近郊)に設置した手作りの電波望遠鏡アレイで受信した電波を分析していた彼女は、電波が記録されたチャート紙になぐり書きのような雑然としたパターンが存在することに気付いた。それがパルサーだったと話す。当時博士課程の学生だったベル=バーネルは、この電波望遠鏡アレイの作製を2年間手伝った後、1967年7月から電波望遠鏡の運用に携わり、1日当たり長さ29mのチャート紙の記録を分析した。その後の数週間で、この宇宙の一画からの信号に複数のスパイクが確認され、詳しく調べた結果、スパイクが1.3秒の周期で正確に反復することが分かった。それから間もなく、3つの類似した発見があった。

1968年、ベル=バーネルらの論文(A. Hewish et al. Nature 217, 709–713; 1968)の出版に先立って、研究成果を発表するためのセミナーが開催された。そこには「ケンブリッジの天文学者全員」が集まった。ベル=バーネルが、指導教官のアントニー・ヒューイッシュと共に「革命」を起こしたことに気付いたのは、このセミナーで報告をしたまさにその時だった。その年の終わりには、パルサー研究が世界的に流行していた。天文学者が新たに数十個の「パルサー」を発見し、オーストリア生まれの天体物理学者トーマス・ゴールドは、パルサーは中性子星だと説明した。中性子星の存在は1930年代に理論的に予言されていたが、実際に発見されてはいなかった。超新星爆発後に残った中性子星の極めて高密度のコアが強い磁場に囲まれると、一筋の電磁波が発生し、それが灯台の光のように地球を照らすと考えられる、とゴールドは説明した。

パルサーは、驚くべき天体だ。死んだ星なのだが、1都市ほどの大きさを有し、質量は太陽を上回り、磁場の強さは地球の20兆倍になっており、回転速度は毎秒7万kmにまで達する。

しかし、パルサーは単なる珍奇な天体ではなく、宇宙の探針としての可能性を秘めていることを、天文学者は早くから見抜いていた。パルサーは、チクタクと音を立てる時計のように規則的に閃光を発する。パルサーからの信号のタイミング、偏光、形状からは、その信号が発生した環境だけでなく、地球に到達するまでの道のりについても手掛かりが得られる。1960年代以降、天文学者は、パルサーからの光に関する精密研究により、太陽の外層大気であるコロナから星間媒質中の物質の密度に至るまで、ありとあらゆることを研究できるようになった。

1974年には、連星系中で伴星の中性子星の周りを回るパルサーが発見された。これにより、極限的な状況下で重力を研究する方法が得られた。また、この天体のダンスが、重力波の存在を示す証拠を初めてもたらした。つまり、この連星の公転速度の減速率が、「巨大質量を持つ天体が高速で運動するときに時空のさざ波(重力波)を発し、エネルギーを失う」という、アインシュタインの一般相対性理論による予言と一致していることが分かったのだ。さらに1992年には、パルサーPSR1257+12が発する電波の精密観測によって太陽系外惑星の存在が初めて明らかになった。

2000個以上のパルサーが観測された今でも、パルサーの利用法に関するアイデアが盛んに提案されている。例えば、パルサータイミングアレイを用いた共同研究の参加者は、パルサーを用い、天空のさまざまな放射源からのパルスの到達時間が時空の拡張と収縮によって微妙に変化することから重力波を直接検出したいと考えている。また、NASAの中性子星観測装置NICER(Neutron Star Interior Composition Explorer)を用いたパルサーの研究では、極限の高密度環境における核力の振る舞いが解明されると考えられている(Nature ダイジェスト 2017年9月号「中性子星の核心に迫るNICER」参照)。また、このNICERミッションでは、地球と交信せずに自分の位置を三角法で割り出すナビゲーションシステムにパルサーを利用できるかどうかを検証することにもなっている。

1967年にパルサーからの信号を初めて見つけたとき、ベル=バーネルとヒューイッシュは、地上で発生した干渉ではないと断定したが、一時は、地球外文明からのメッセージではないかと考えることもあった。こう考えるだけでマスコミが非常に大きな関心を示した[おまけにベル=バーネルの知名度も上がり、マスコミからは、それまでのボーイフレンドの数とか、マーガレット王女(エリザベス女王の魅力的な妹)より背が高いかどうか、といった奇妙な質問が寄せられた]。地球外生命体の発見となれば、重大な出来事になっていただろう。そこまでは行かないが、パルサーは、最も刺激的な発見の域にほぼ達しており、有益な発見でもあった。つまり、宇宙からの最高の贈り物だったのだ。

(翻訳:菊川要)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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