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動物の個性と集団行動

Nature ダイジェスト Vol. 14 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2017.170109a

集団にならって変わる場合もあるが基本的には一貫している

ヤドカリからネズミや魚まで多くの生物種に個性があり、さまざまな時と場合で個体別の行動に一貫した違いが見られることが明らかになっている。

そうした個性は社会的状況からどのような影響を受けるだろうか? この点を調べるため、ブリストル大学(英国)の生物学者Christos C. Ioannouらはイトヨという小さなトゲウオ科の魚に注目した。「イトヨは自然界で個体行動と集団行動の両方を観察できる」ため、さまざまな状況下で個性を評価するのにぴったりだという。

Ioannouらは、80匹のイトヨを捕獲し、それぞれを水槽の片端に入れた。その上部には保護カバーが付いている。水槽のもう片方の端には餌を置いた。餌を食べるためにカバーのない所を泳ぐのはリスクを伴う。カバーがない所は水上の捕食動物から丸見えで、狙われる恐れがあるからだ。

イトヨはそれぞれ数日間、一貫性のある行動を示した。大胆な個体はカバーのある場所をさっさと離れて餌に向かった。臆病な個体は隠れ家を出るまでに時間がかかり、水槽の他端へ向かう泳ぎも慎重だった。だが保護カバーの下に10匹まとめて入れると、それぞれの個性が薄れた。

大胆な個体がグループのリーダーとなったが、単独の場合に比べると慎重であった。「最初に隠れ家を離れた魚は比較的短時間で出てきたのですが、他の魚がついてきていないことに気付いていたようで、他が追随してくるのを待っていました」とIoannou。その後、この魚をグループから離して単独行動させると、元の個性を取り戻した。この結果は2016年9月にScience Advancesに掲載。

今回の発見は集団の力学が個性を抑えることを示唆している。研究チームによると、こうした抑制がその背景となっている原因と直接に関係付けられたのは初めてだ。つまり、リスクを伴う決断に迫られた場合には、他のメンバーにならって行動するというわけだ。

セントアンドリュース大学(英国)の動物行動学者Mike Websterによると、これまで動物の個性を研究する科学者は集団行動を無視し、集団行動を研究する科学者は個体差を軽視してきた。彼は「今回の研究の真価は、そうした2つの流れを1つにまとめたことにあります」と話す。

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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