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ご近所にあった超新星

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2016.160731

原文:Nature (2016-04-07) | doi: 10.1038/532040a | Supernovae in the neighbourhood

Adrian L. Melott

深海底の堆積物に含まれる超新星由来の放射性同位体の測定と、それらの同位体がどのように地球に到達したかのモデル化から、生物の進化に影響する可能性があるほど地球の近くで、多数の超新星爆発が起こっていたことが分かった。

図1:超新星爆発のシミュレーション
太陽系近傍の複数の超新星爆発によって銀河系内に生じた、220万年前の鉄60同位体の密度分布の高分解能数値シミュレーション結果2。Breitschwerdtらが行ったもので、緑色の濃淡が密度を示している(★は地球の位置)。爆発によってできた泡状構造は局所泡(右手前)とループ第一泡(左)と呼ばれ、高温で低密度のガスでできた大きな空洞状領域で、吹き寄せられた破片でできた殻で取り囲まれている。太陽系は約1000万~500万年前から局所泡を通過している。Breitschwerdtらによる超新星から放出された鉄60の軌跡のシミュレーションは、Wallnerらによる深海底クラスト中の同位体の測定結果と矛盾しない1。 | 拡大する

ZENTRUM ASTRON. ASTROPHYS., TU BERLIN, MICHAEL SCHULREICH

超新星は、大質量の恒星が一生の最後に大爆発を起こして突然明るく輝く現象であり、大量のエネルギーや物質を放出する。超新星爆発は、地球に影響を及ぼすほど地球の近くでも起こり、生物の大量絶滅や気候変動にも関係していたのではないかと、天文学者たちは半世紀以上前から考えてきた。今回、超新星で作られ、地球上に存在する鉄の同位体(鉄60;60Fe)に関する2編の論文がNature 2016年4月7日号に掲載され、地球から数百光年以内の近距離で過去数百万年の間に、複数の超新星爆発が起こっていたことが明らかになった。オーストラリア国立大学(キャンベラ)のAnton Wallnerをはじめとする国際共同研究グループ(清水建設、筑波大学、東京大学、日本大学の研究者らを含む)は、深海底の堆積物に含まれる鉄60を測定し、この同位体が地球に降り注いだ時期について報告した(同号69ページ1。一方、ベルリン工科大学(ドイツ)のDieter Breitschwerdtらは、太陽系近傍で起こった超新星爆発の時期と場所を推定し、超新星から地球への鉄60の輸送をモデル化した(73ページ2。こうした研究のおかげで、重要な質問にある程度の正確さで答えることが可能になりつつある。例えば、地球近傍で過去に起きたこれらの超新星爆発は、地球の気候や生物に重大な影響を及ぼした可能性があるだろうか? そして、人類の進化にも影響しただろうか?

地球では、過去5億年ほどの間に、さまざまな規模の大量絶滅イベントが繰り返し起こっている。例えば、白亜紀末(約6600万年前)に、恐竜をはじめ地球上の全生物種の半数以上を絶滅に追いやったことで有名なイベントもあれば、それより規模が小さくて、あまり知られていないジュラ紀末(約1億4500万年前)に起きたとされる絶滅イベントもある。1954年、地球近傍の超新星爆発がペルム紀末(約2億5000万年前)の大量絶滅イベントを引き起こしたという研究結果が発表された3。この絶滅イベントは地球史上最大規模のものであり、全生物種の90%以上が絶滅したとされている。この報告を機に、その後数十年間にわたり、超新星爆発などの恒星関連イベントがどれほど頻繁に起こるのか、また、そうしたイベントが地球や星間物質にどのような影響を及ぼし得たのかを評価することに重点を置いた研究が行われた。意外なことではないが、こうした研究は正確なものではなかった。

1996年に画期的な計算が行われ、地球から約100パーセク(約300光年)以内という比較的近い距離で起こる超新星爆発であれば、生じた放射性核種は地球まで到達し、地球上に堆積した可能性があるという研究結果が報告された4。こうした爆発はおよそ100万年に1回の割合で発生する。超新星で作られた放射性同位体は、磁場やガスの圧力による影響の少ない、塵の粒子によって運ばれたと考えられた。しかし、計算で使われた同位体のいくつかは、超新星の証拠として用いるには問題がある。例えば、ベリリウム10(10Be)は、地球大気に衝突する放射線によっても生じる。またプルトニウム244(244Pu)の測定は、核実験による背景汚染に邪魔される。しかし、この研究により、見積もりと測定結果の具体的な比較が初めて可能になった。

1999年、深海底の「鉄マンガンクラスト」(海底の露出した岩石などを覆う層状の鉄・マンガン酸化物集合体)から鉄60が検出された5。鉄60は半減期が260万年の放射性同位体で、多くの型の超新星で豊富に作られる一方、超新星以外の経路でもたらされる量は最大で超新星の10分の1ほどにすぎないため、超新星の非常に優れた指標になる。この研究が突破口となり鉄60の測定結果が次々と報告されるようになったが、こうした成果は、加速器質量分析法という、さまざまな同位体を質量によって分離し、原子を直接計数できる技術が開発されなければ実現しなかったといえる。2003年には、超新星起源の光子と宇宙線が地球大気に及ぼす効果の詳細な計算が初めて行われた6。この研究は、超新星爆発の「殺傷距離」を約8パーセクと具体的に与え、その範囲内ではこれらの高エネルギー粒子による地球上の生物相への影響は壊滅的なものになるだろうと推測された6。これほど地球に近い超新星爆発は、平均で8億年に1回ほどの頻度で起こっているとみられ7、また、比較的地球の近くで発生したガンマ線バーストによるイベントも、時折あったとみられる。

今回Breitschwerdtらは、地球近傍で超新星爆発を引き起こしたとみられる運動星団の軌跡と質量、爆発の時期と位置を推定した。この運動星団の一部の恒星が超新星爆発した結果、銀河系(天の川銀河)内に「局所泡」と呼ばれる、高温で低密度のガスでできた直径100パーセクほどの空洞状領域ができた。太陽系は現在、その中を進んでいる(図1)。Breitschwerdtらは鉄60の地球への輸送のモデル化や数値シミュレーションを行い、深海底の鉄マンガンクラストに含まれる鉄60は、地球から90~100パーセクの距離で230万年前と150万年前に起きたとみられる2回の超新星爆発によってもたらされたと結論した。鉄60の超新星での生成量や輸送過程での損失量には不確かさが残るものの、鉄60の堆積層間の相対的分布には影響しないとしている。今回の彼らの成果は、超新星爆発を引き起こした星団のダイナミクス、星間物質のダイナミクス、および地球上での同位体の堆積、の3つを統合したシナリオの重要な概念証明といえる。この研究で示された一連の変数は、堆積過程を解析的に見積もった最近の研究で示唆された範囲にある7

一方Wallnerらは、4つの堆積物コア、2つの鉄マンガンクラスト、2つの鉄マンガン団塊という、3種類の深海底試料の加速器質量分析を行い、鉄60の他、年代測定などのためにアルミニウム26(26Al)、ベリリウム10を測定した。その結果、鉄60が地球全体のさまざまな海域の試料から検出されること、また、検出されるのは特定の時期の層にほぼ限られることが分かった。鉄60が検出される層の鉄60の同位体比は、平均でバックグラウンドの約40倍に達していた。測定結果は、870万~650万年前と320万~170万年前の2回にわたり、鉄60を地球にもたらす大きなイベントがあったことを示し、その源は超新星と考えられた。いずれのイベントも時間的広がりが150万年以上と1回の爆風の波の通過で説明されるよりも長かった。Wallnerらは、複数の超新星が比較的短期間に連続して爆発して太陽系に直接的に影響したか、複数の超新星の生成物を含んだ星間物質の中を太陽系が通過して間接的な影響を受けたかのどちらかだろうと提案している。

太陽系が銀河系内を巡る軌道上で遭遇する環境はさまざまであり、環境によって超新星の発生率も大きく変化すると予想されることを考慮すれば、直接的な影響のシナリオも間接的な影響のシナリオも共に合理的な説明だろう。Wallnerらが得たデータは、Breitschwerdtらが行ったような理論モデル研究を大きく前進させるはずだ。また、宇宙線のスペクトル(宇宙線の大部分は加速された陽子である)に見られるいくつかの不可解な特徴についての研究にも役立つだろう。Breitschwerdtらが今回見いだした超新星と同じ距離(地球から約100パーセク)で、約200万年前に超新星爆発が1回起きていたならば、こうした特徴の説明がつくからだ8

こうして統合され浮かび上がったシナリオから、地球が経験してきた激しく過酷な過去のイベントについて、我々は何を見いだすことができるだろうか。今回、深海の堆積物に記録されていた超新星爆発は、いずれも殺傷距離の外で起こり、大規模で全地球的な大量絶滅の時期とは一致していない9,10。しかしながら、鉄60が堆積した期間には地球全体の気温の低下があり、低温は更新世(約260万~約1万2000年前)の長い氷河時代に最も顕著だった。超新星と低温との間に関連があるかは分からないが、この気候変動が人類の進化につながった条件の1つであった可能性はある。超新星爆発の影響による大気の電離が、雷の増加などの気候への影響をもたらしたとも考えられる11。今回の2つの研究1,2は、モデル化と詳細な調査における新たな道を開き、地球近傍で起こった恒星の大爆発の結果、過去1000万年に地球に何が起こったかについてより深い理解を与えてくれるだろう。

(翻訳:新庄直樹)

Adrian L. Melottはカンザス大学(米国ローレンス)に所属。

参考文献

  1. Wallner, A. et al. Nature 532, 69–72 (2016).
  2. Breitschwerdt, D. et al. Nature 532, 73–76 (2016).
  3. Schindewolf, O. H. Neues Jb. Geol. Paläontol. 10, 457–465 (1954).
  4. Ellis, J., Fields, B. D. & Schramm, D. N. Astrophys. J. 470, 1227–1236 (1996).
  5. Knie, K. et al. Phys. Rev. Lett. 83, 18–21 (1999).
  6. Gehrels, N. et al. Astrophys. J. 585, 1169–1176 (2003).
  7. Fry, B. J., Fields, B. D. & Ellis, J. R. Astrophys. J. 800, 71 (2015).
  8. Kachelrieß, M., Neronov, A. & Semikoz, D. V. Phys. Rev. Lett. 115, 181103 (2015).
  9. Bambach, R. K. Annu. Rev. Earth Planet. Sci. 34, 127–155 (2006).
  10. Melott, A. L. & Bambach, R. K. Paleobiology 40, 177–196 (2014).
  11. Erlykin, A. D. & Wolfendale, A. W. Surv. Geophys. 31, 383–398 (2010).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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