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ブラックホールの自転をつかむ

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2016.160609b

連星ホールの解析から片方の自転速度が判明

ブラックホールは大質量であっても非常にコンパクトな天体だ。この性質の組み合わせのため、広大な宇宙空間で評価するのが難しい領域になっている。物理的な性質をより詳しく知るには、うまい測定技術を編み出す必要がある。先頃、ある国際天文学者チームが新しい方法を考案した。2つの巨大質量ブラックホールが互いの周囲を回っているブラックホール連星系の相互作用をもとに一方の自転速度を決める方法で、Astrophysical Journal Lettersに報告された。

「OJ 287」は巨大質量ブラックホールの連星系で、地球から約35億光年の位置にある。重い方のブラックホールの質量は推定で太陽の180億倍だが、他方は1億5000万倍しかない。この劇的な違いのため、小さな方のブラックホールは、大きなブラックホールの周囲で渦巻く超高温物質の円盤を突き抜ける軌道をたどる。降着円盤を突き抜けるこの現象は12年の周期で起こり、その際に明るさが一時的に増す「アウトバースト」が生じる。降着円盤の超高温物質が発する可視光の変化として観測されてきた。

この現象の発生と、その際に小さなブラックホールの楕円軌道に生じる歳差(楕円軌道軸のずれ)は理論的に予測可能なため、天文学者たちはそれに基づいて2015年後半に生じるアウトバースト現象を予想し、同年11月と12月に2つの増光ピークを観測した。この間の光度変化を精密測定することにより、大きな方のブラックホールの自転速度を間接的に測定することに成功し、一般相対性理論で許される最大値の31%で自転していることが分かった。

従来の観測結果と合わせ、これらのデータはブラックホール連星の軌道周期が次第に短くなっていることを明確に示している。連星系が重力波を放射するにつれてエネルギーを失うからだ。時空のさざ波である重力波がブラックホールの運動からエネルギーを奪い、軌道を縮小させている。

言い換えれば、天文学者がOJ 287で目撃しているのは2つの巨大質量ブラックホールが徐々に合体していく過程だ。そしてほとんどのカップルが知っているとおり、一緒になる前段階には一時的な増光と高速旋回がつきものだ。

(翻訳:鐘田和彦)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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