カナダ首相が科学関連の大臣ポストを新設
Credit: DC Productions/Photodisc/Thinkstock
2015年11月4日に就任したカナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)新首相は、最初の仕事の1つとして科学大臣のポストを新設した。
初代科学大臣に就任するのはトロント大学(カナダ)の医学地理学者Kirsty Duncanだ。彼女は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の2001年の報告書の作成に参加した他、スペイン風邪と呼ばれた1918年のインフルエンザ大流行に関する書籍も出版している。
彼女の任命により、新政府は、科学分野の監督をカナダ産業省の閣外大臣に任せていたスティーヴン・ハーパー(Steven Harper)前首相の政府とは違うことを印象付けた。
バンクーバーを本拠地とする非営利環境保護団体デスモッグ・カナダ(DeSmog Canada)の環境政策アナリストのCarol Linnittは、「ハーパー前首相は、科学の視界を産業の範囲に狭めてしまいました」と批判する。
科学者や科学関連団体はDuncanが任命されたことを喜ぶが、科学大臣の責務の範囲についてもっと知りたがっている。オタワ大学科学・社会・政策研究所の前所長であるMarc Sanerは、「閣外大臣ではなくて閣僚!しかも博士号を持っている!イメージ的には素晴らしいですが、実際にどのように機能するかは、私には分かりません」と言う。
トルドー首相はまた、イノベーション・科学・経済開発大臣のポストを新設し、大臣には証券アナリストのNavdeep Bainsが任命された。
オタワ大学の生物学者で、科学技術組織の協会Partnership Group for Science and Engineering(オタワ)の会長であるRees Kassenは、「額面どおりに受け取るなら、科学担当大臣が2人いることになります」と言う。彼は、Duncanは科学大臣として大学や企業が開拓しようとしない分野の研究を政府が行えるようにすることを目指し、一方のBainsは民間部門の技術革新を推進しようとするのではないかとみている。
トルドー新首相は環境大臣の名称も改め、環境・気候変動大臣とした。Catherine McKenna環境・気候変動大臣は弁護士で、国際貿易、投資、憲法問題などの専門家だ。今後はさらに、首席科学顧問が任命される予定だ。
翻訳:三枝小夜子
Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2016.160214
原文
Canadian leader names science ministers- Nature (2015-11-12) | DOI: 10.1038/nature.2015.18739
- Nicola Jones
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