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太陽系から最も近い恒星に、地球に似た惑星

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161115

原文:Nature (2016-08-25) | doi: 10.1038/nature.2016.20445 | Earth-sized planet around nearby star is astronomy dream come true

Alexandra Witze

プロキシマ・ケンタウリの周りを公転する地球サイズの惑星には、液体の水があるかもしれない。もしかすると生物もいるかもしれない。

新たに発見された惑星は、11.2日周期でプロキシマ・ケンタウリの周りを公転している。 | 拡大する

RICARDO RAMIREZ

太陽系に最も近い恒星プロキシマ・ケンタウリの周囲に、地球サイズの惑星が見つかった。さらにその惑星の軌道は、液体の水が存在するのにちょうどよい距離にあるという。ロンドン大学クイーンメアリー校(英国)の天文学者で、今回の発見をした研究チームを率いるGuillem Anglada-Escudéは、「ここから生命探査が始まるのです」と言う。この発見は、Nature 2016年8月25日号1に発表された。

人類がこの惑星を探検する最初の機会は、数十年後に訪れるかもしれない。起業家ユーリ・ミルナー(Yuri Milner)らが2016年4月14日に発表した「ブレイクスルー・スターショット」計画のターゲットになっているからだ。このプロジェクトでは、超小型のレーザー推進式星間宇宙船を建造し、その船団の帆に地球からレーザーを照射し光速の20%まで加速させることで、地球からプロキシマ・ケンタウリまでの1.3パーセク(4.2光年)の距離を約20年で旅することを目指している。

プロキシマは赤色矮星で、太陽よりもはるかに小さく、非常に暗い。その惑星の質量は地球の1.3倍以上あり、公転周期は11.2日だ。コロンビア大学(米国ニューヨーク)の天文学者David Kippingは、「液体の水があって生命が存在する可能性のある、まさに典型的な惑星です。わくわくします」と語る。

見えない惑星を探す

プロキシマを周回する惑星の存在は、複数の研究結果から示唆されていた。科学者たちは2000年から、チリのラ・シヤにある欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTの紫外線・可視光エシェル分光器(UVES)を使って、惑星の重力によってふらつく恒星の光の変化を探していた。観測結果は、11.2日の周期でプロキシマに何かが起きていることを示していたが、天文学者たちは、その信号がプロキシマの周りを公転する惑星によるものなのか、別の種類の活動(プロキシマのフレアなど)によるものなのかを見極められずにいた。

2016年1月、Anglada-Escudéらは、プロキシマの惑星を確認するための観測に着手した。ESOは彼らの要請に応じて、1月19日から3月31日までのほぼ毎晩、3.6m望遠鏡の高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)を使って20分ずつ観測できるようにした。「10日間の観測を終えた時点で、惑星の存在ははっきり分かっていました」とAnglada-Escudéは言う。

1990年にNASAの宇宙探査機ボイジャー1号がはるかかなたから地球を撮影した有名な写真「ペール・ブルー・ドット」にちなみ、今回のプロジェクトは「ペール・レッド・ドット」と名付けられた。プロキシマは赤色矮星なので、その惑星は地球の夕焼けのような赤やオレンジがかった色に見えるだろうと予想されたからだ。

この惑星は、液体の水が存在するのにちょうどよい程度にプロキシマから離れているが、それ以外の要因により生物が生存できない環境になっていることも考えられる。例えば、惑星とプロキシマの間で「潮汐ロック」が起きていて、惑星がプロキシマに常に同じ面を向けている可能性がある。その場合、プロキシマに向いている面は焼け付くような高温で、反対側の面は凍えるような低温だろう。また、活動的なプロキシマは、時に危険なX線フレアを惑星に浴びせてくるかもしれない。だがこの惑星に、X線フレアから惑星表面の生物を守る大気があるかどうかはまだ分からない。

プロキシマは単独の恒星ではなく、ケンタウルス座α星という三重連星の1つである。残りの2つの恒星はα星A、α星Bと言い(プロキシマにはα星Cという別名がある)、2012年にはα星Bに地球程度の質量の惑星があるとする論文が発表されたこともあった2。こちらの論文は現在ほとんど否定されているが3,4、太陽系外惑星の専門家たちは今回の結果から、プロキシマに惑星があるのはほぼ確実と見ている。

Anglada-Escudéのチームは、2016年1月に行われた新しい観測データと、2000年に始まった古い観測データを組み合わせたことで、今回の発見の信頼性を高めることができたという。研究チームのメンバーであるテキサス大学オースティン校(米国)の天文学者Michael Endlは、「信号は、位相の点でも振幅の点でも、長期にわたってしっかり存在しています。惑星の存在を示す明確なサインです」と言う。またこのデータは、プロキシマの周りを100~400日周期で公転する第2の惑星が存在する可能性も示唆している。

研究者たちは現在、この惑星がプロキシマの前を横切る「トランジット」現象を地球から見ることができるか調査中である。こうした現象からは、惑星に大気があるかどうかを明らかにできる可能性がある。Kippingが率いる研究チームは、プロキシマの周りのトランジットを独立に探していて、現在、その信号を探し出すために猛然とデータ処理を進めている。

ペンシルベニア州立大学(米国ユニバーシティーパーク)の天体物理学者Steinn Sigurdssonは、「プロキシマの惑星の発見は、科学者たちが矮星の周りの小さな惑星に関心を寄せるようになった時期とうまく重なった」と言う。NASAのケプラー宇宙望遠鏡による観測から、矮星の周りには岩石惑星がよく見つかることが分かっている。その上、矮星は銀河系で最も一般的なタイプの恒星だ。「矮星の周りで地球に似た惑星を探すという戦略の正当性は、これらの事実によって裏付けられます」。

いつの日か、プロキシマの惑星が、惑星研究の新たなステージの第一歩として見られるようになるかもしれない。「この惑星が、次世代の望遠鏡の目標かつ焦点になるのです。いつか人類がこの惑星を訪れることさえあるかもしれません」とKippingは語る。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Anglada-Escudé, G.et al. Nature (2016).
  2. Dumusque, X. et al. Nature 491, 207–211 (2012).
  3. Hatzes, A. P. Astrophys. J.770,133(2013).
  4. Rajpaul, V. , Aigrain, S. & Roberts, S. Mon. Not. R. Astron. Soc. 456, L6–L10 (2016).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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