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クローン動物短命説は誤りだった

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161108a

初の厳密な検証が行われ、通常の動物と同じであることが判明した

20年前のクローンヒツジ「ドリー」の誕生は、哺乳動物の成体細胞から抽出したDNAを未受精卵に注入することによってドナーと全く同じ遺伝情報を持つ動物を作製できることを証明した。だがドリーは若くして死んだため(6歳で死亡)、クローン動物の寿命は短いという印象が残った。

クローン動物は「自然に生まれた」動物よりも生まれつき不健康なのだろうか? それを明らかにするために、ノッティンガム大学(英国)の発生生物学者Kevin Sinclairは、ドリーのクローン姉妹であるデビー、デニス、ダイアナ、デイジーの4頭を、誕生から中年期まで追跡調査した。この4頭はドリーと同じ凍結乳腺細胞に由来するクローンヒツジだ。Sinclairらはこの他、別の細胞から作られた9頭のクローンヒツジも観察した。

これら13頭は現在9歳を超えているが(人間では70歳代から80歳代に相当)、全て通常のヒツジと同程度に健康であることが、骨スキャンと血糖値、詳細な血圧測定から明らかになった。「これらのクローンヒツジは完全に正常だと言えます」とSinclair。彼らはこの成果をNature Communicationsに報告した。

ではドリーはどうして早世したのだろうか? ドリーの研究に携わっていた研究者らは、ドリーは同じ群れに広まっていた伝染病によって死亡したのであって、クローン特有の問題が原因ではないという。確かにドリーはひざに関節炎を起こしていたが、ドリーが生まれたロスリン研究所(英国エディンバラ)の遺伝学者Helen Sangは、室内で飼育されドリーと同様に頻繁に餌を与えられたヒツジは皆、関節に問題が生じるだろうと言う。

クローン作製は、20年たった現在も、自然交配よりも効率が悪い。だが今回の研究は、クローン動物が胎内で無事に育って出生後の数週間を健康に乗り切れば、自然に生まれた仲間と同様に生き延びると期待できることを示している。

クローン技術は現在、研究用の胚性幹(ES)細胞の作製や、高付加価値の家畜の育種に用いられている。クローンに長寿あれ!

(翻訳:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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