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大隅良典氏がノーベル医学・生理学賞を単独受賞!

カロリンスカ研究所(スウェーデン)は10月3日、オートファジー(自食作用)の仕組みを解明した大隅良典・東京工業大学栄誉教授に2016年のノーベル医学・生理学賞を授与すると発表した。

細胞内の部品が膜で取り囲まれ、分解を担う細胞小器官リソソームに送られてリサイクルされることが最初に観察されたのは1960年代。この現象は「自分自身(auto-)」、「食べる(phagein)」という意味でautophagyと名付けられた。その仕組みは長らく不明であったが、1990年代に大隅氏(当時、東京大学助教授)が酵母の液胞でオートファジーをつぶさに観察し、必須遺伝子を次々と単離したことを皮切りに解明が進み、現在では疾患との関連も明らかになってきている。授賞委員会はこの分野の開拓者として高く評価したようだ。

大隅氏はNature ダイジェスト の取材の中で「酵母は優れたモデル生物であり、大勢の人たちに研究されていましたが、液胞だけは別でした」と語るように、誰も注目しなかった液胞でオートファジーを観察した。また、この現象は飢餓状態でしか現れない。遺伝子は「生存に必須でない」と見過ごされていた。手掛かりがほとんどない中、大隅氏は生命の基盤にある重要な機構を独自に見いだしたのである。詳細は2015年10月号23ページ「誰も注目しなかった液胞でオートファジーを発見」(nature.asia/NA-interview2015)を参照されたい。

(編集部)

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 11

DOI: 10.1038/ndigest.2016.161103