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地球外生命体の探し方

Nature ダイジェスト Vol. 13 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2016.161011

原文:Nature (2016-07-28) | doi: 10.1038/535474a | Planet hunters seek new ways to detect alien life

Alexandra Witze

地球外生命体の存在を示す化学的痕跡とは何か。宇宙生物学の研究者たちが検討を始めている。​

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Image credit: NASA Ames/JPL-Caltech/T. Pyle​​

地球外生命体の探索に誤報はつきものである。研究者らは、火星の生命に関する1970年代の報告から、隕石中に「発見」された地球外微生物の化石らしきものに関する1990年代の報告に至るまで、さまざまな主張を広く検討し、却下してきた。

米航空宇宙局(NASA)は、太陽系外に何千という惑星が発見されたことに端を発し、地球外生命を見つける方法を模索する新たな取り組みを開始した。目標は、地球外生命体はどういったガスを生成する可能性があるかを探ることと、そうした「生命の痕跡」を、地上の天文学者が何兆kmも離れた惑星大気を通過する光の中から検出するにはどうすればよいかを探ることだ(「地球外生命体を探して」参照)。

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SOURCE: CHART: S. SEAGER & W. BAINS SCI. ADV. 1, E1500047 (2015); CONE: REF. 5

そして2016年7月末、NASAは米国ワシントン州シアトルでワークショップを開催するに至った。最終的な目的は、見苦しい誤りを避けるためにNASA太陽系外惑星グループが助言を得ることである。「太陽系外惑星に生命体が存在する有力な証拠とはどのようなものなのか、協力して確認していかなければなりません」とワークショップの主催者の1人でNASAゴダード宇宙飛行センター(米国メリーランド州グリーンベルト)の天文学者のShawn Domagal-Goldmanは言う。

天文学者らは、2018年に打ち上げが予定されているNASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などの次世代望遠鏡で得られる太陽系外惑星のデータをどう解釈するか検討を重ねており、こうした活動は重要な時期に来ている。また、生きた生物がいない場合に酸素などの典型的な生命痕跡ガスはどのような機構で生成し得るのか解明に取り組む科学者もいれば、生命を維持し得る生化学過程の種類をできるかぎり広げて検討しようとする科学者もいる。

「生命体のいない惑星に生命体がいると勘違いするかもしれないし、太陽系外惑星でどんな物質が生成し得るかについて理解が不十分なため生命体を見逃すかもしれません」とセントアンドリュース大学(英国)の天文学者Sarah Rugheimerは言う。

生命痕跡ガスの検出は、太陽系外惑星で起こっている可能性がある事象を理解する第一歩にすぎない。それぞれの世界には独自の物理的要因と化学的要因の組み合わせが存在するが、そうした組み合わせで生命が生じるかどうかは分からないと、ワシントン大学(米国シアトル)の天文学者Victoria Meadowsは言う。「全ての惑星が同じ道をたどると考えてはいけません。惑星はそう簡単に秘密を明かしてくれないと思った方がよいのです」と彼女は言う。

カギとなるのは惑星の環境だ。地球サイズの惑星の中には、銀河で最も一般的なM型矮星という恒星の周りを、液体の水を保持できる適切な距離で周回しているものがある。しかしMeadowsの共同研究者らは、惑星の水が光エネルギーによって水蒸気(強い温室効果ガス)となり惑星大気に大量に送り込まれ著しい温度上昇(暴走温室効果)を引き起こした後、光化学反応によって酸素と水素に分解され、軽い水素だけが宇宙へと逃げて行ってしまう可能性があることを示した1。そうすると、厚い酸素の毛布が残されることになる。このような酸素は生きた生物に由来するように見えるかもしれないが、暴走温室効果の結果だ。

しかし、生物由来か否か見分ける方法がある。暴走温室効果によって地球大気の数千倍の濃度の大気が生成すると、O2分子が衝突してO4を生成する。従って惑星大気中にO4を発見できれば、酸素が生物に由来しないことを示す手掛かりになると、Meadowsのチームが2016年に報告している2

別の方法もある。酸素ほど目立たないが特定の条件下で生物によって作られた可能性のある生命痕跡ガスをリストアップすることだ。これらには、硫化ジメチル3(地球上ではプランクトンが生成する)やアンモニア4などが含まれる。太陽系以外の低温惑星では、生物は製造会社と同じ化学プロセスを利用してガスを作っているかもしれない。

マサチューセッツ工科大学(米国ケンブリッジ)の天文学者Sara Seagerは、惑星の大気中で安定に存在する1万4000種の化合物を調べ始めた。Seagerらは、大気中に化合物を送り込む地球物理学的な経路が存在するかどうかなどの基準を使って、当初のリストの分子をふるいわけしている5。「1つ1つチェックして選別を行っているのです。何一つ見逃したくありませんから」とSeagerは言う。

シアトルのワークショップは、生命痕跡ガスとその化学的特性のリストを作成することも目的としている。そこでの情報は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のデータの解析に取り入れられる予定だ。この望遠鏡で、ほんの一握りとはいえ居住可能な惑星が観察できるようになる。どのガスがどの世界を包んでいるのか初めて詳細に分かるようになると、宇宙望遠鏡科学研究所(米国メリーランド州ボルティモア)の天文学者Nikole Lewisは言う。

地球外生命体の確実な指標となるガスは存在しない。しかし、Domagal-Goldmanは今回のワークショップで、科学者はどこで間違うのか、その可能性を把握する枠組みができればと考えている。「派手な報道発表も、1週間後に面目を失うことも、望んでいません」と彼は言う。

(翻訳:藤野正美)

参考文献

  1. Luger, R. & Barnes, R. Astrobiology 15, 119–143 (2015).
  2. Schwieterman, E. W. et al. Astrophys. J. 819, L13 (2016).
  3. Domagal-Goldman, S. D., Meadows, V. S., Claire, M. W. & Kasting, J. F. Astrobiology 11, 419–441 (2011).
  4. Seager, S., Bains, W. & Hu, R. Astrophys. J. 775, 104 (2013).
  5. Seager, S., Bains, W. & Petkowski, J. J. Astrobiology 16, 465–485 (2016).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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