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しょっぱいエウロパの海

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2015.150909b

茶色い筋の正体は変性した塩らしい

木星の衛星エウロパの地下の海には生命が栄えているかもしれない。これはいまだに隠された謎だ。だが、この氷の天体をめぐるもう1つの謎は丸見え状態で示されている。表面を縦横に走る亀裂やクレーターの多くを埋めている謎の茶色いヘドロ「ブラウンガンク」だ。「茶色いヘドロ。まさにそう表現するしかありません」と米国航空宇宙局(NASA)のCurt Nieburは言う。

Nieburは最近の学会で、この正体不明の物質がエウロパ深部から噴き上げる水によって地表に運ばれている可能性が大きいと説明した。「ブラウンガンクの正体を突き止められれば、その水、つまりエウロパの海の中にあるものが分かります」とNiebur。そうした知見はこの衛星が生命を宿しているかどうかを知る上で非常に重要になるだろう。

電子ビーム照射で食塩が変質

NASAの2人の惑星科学者Kevin HandとRobert Carlsonは手掛かりをつかんでいる。このヘドロは地球の海に存在するのと同じただの塩で、放射を受けて焼かれたものらしい。この結論に至ったのは、エウロパの過酷な環境を模擬した実験による。極低温の真空容器中で電子ビームを浴びせる装置(通称「缶の中のエウロパ」)で通常の食卓塩を処理したところ、サンプルが黄褐色に変わり、エウロパのブラウンガンクに見られたのと似た分光特性を生じた。この発見は5月にGeophysical Research Lettersに発表された。

放射線を浴びた塩が本当にヘドロの正体である場合、地下の海は地球の海と同じく岩盤と直接に接触していて、生命を育んだと考えられる鉱物に富んでいる可能性がある。また、実験では真空容器中の環境に長くさらすほど塩の色が濃くなったことから、今後のエウロパ観測では、最も色の薄いガンクを探せば、そこが隠れた海から水が湧き上がっている場所であると特定できるかもしれない。NASAは遠からず探査を開始する予定で、2020年代にエウロパへ探索機を送り込む構想をこの春に発表している。

(翻訳:鐘田和彦)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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