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エチオピアでヒト属最古の化石発見!

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 5 | doi : 10.1038/ndigest.2015.150503

原文:Nature (2015-03-04) | doi: 10.1038/nature.2015.17039 | Ethiopian jawbone may mark dawn of humankind

Ewen Callaway

人類の出現時期を50万年さかのぼらせるエチオピアの新たな化石と、ホモ・ハビリスの基準標本の再復元で得られた3次元モデルから、人類の誕生とその進化の過程は予想以上に込み入っていたことが示された。

エチオピア・アファール州レディ・ゲラル(Ledi-Geraru)調査地区で出土した、280万年前の下顎骨の破片の分析結果が報告された。その特徴から、この骨はヒト属の化石として最古のものと見られる。また、別の研究チームにより、重要な初期人類種として50年前に報告されホモ・ハビリスの基準(ホロタイプ)となった化石の再分析結果が報告され、この化石標本が、過去にこれと同種とされたより古い人類化石群や同年代の他種とは異なる特徴を持つことが明らかになった。これらの結果は、我々ヒト属の黎明期には多様な進化系統が存在していたことを示している。

現生人類「ホモ・サピエンス」は、ヒト属の系統では最も新しい種で、500万~700万年前に、人類に最も近縁の2現生種(チンパンジーおよびボノボ)との共通祖先から分岐した。だが、「系統の鎖」は、化石記録の上では完全にはつながっていない(次ページ「人類の誕生?」参照)。これは、鎖を構成する環がいくつか未発見であること、そして研究者たちにとって進化の行き止まり(系統樹の中の側枝)と真の人類祖先とを区別することが困難だったことを意味している。

ホモ・エレクトスが祖先の1種であることは、多くの研究者が認めている。この種は、約200万年前にアフリカ東部に出現した。その大きな脳と高い身長は、いずれも現生人類に近い。もう一方の鎖の先には、現生人類の鎖とつながると考えられる種がいる。400万~300万年ほど前に存在したさらに類人猿様の生物、アウストラロピテクス・アファレンシスだ。この種は直立歩行していたものの、身長はわずか1m余りで、脳が小さかった。そして、この両者の間をつなぐと考えられている種はホモ・ハビリスだが、鎖がつながらない300万~200万年前の間に「初期ヒト属」種が少なくとも2種いたと推測する研究者もいる。

最初の古代人?

2013年1月29日、エチオピア北東部のアファール地域一帯を調査していたアリゾナ州立大学(米国テンピー)の古人類学者たちは、280万年前の地層に下顎骨を発見した。この下顎骨を分析したネバダ大学ラスベガス校(米国)の古人類学者Brian Villmoareによれば、その歯は他のヒト属種と同じく小ぶりで、放物線状をした顎の形状は、アウストラロピテクス属よりもヒト属に分類する方が適しているという。つまり、最古のヒト属種、ことによると最初の古代人のものである可能性がある。Villmoareらのこの成果は、付随するもう1編の論文とともにScienceオンライン版に3月4日に掲載された1。だが研究チームは、その顎に種名をつけることを思いとどまった。さらに骨が見つかるのを待つことにしたのだという。「何としてでも発見するつもりですが、全ては運次第です」とVillmoareは言う。

ジョージ・ワシントン大学(米国ワシントンD.C.)の人類学者Bernard Woodは、「彼らの分析結果は、その顎がヒト属最古の証拠でなかったとしても、その近くに位置付けられる類いの生物を強く裏付けるものなのは間違いないと思います」と語る。ハーバード大学(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)の古人類学者Daniel Liebermanは、その顎の正確な年代測定値に触れ、「ヒト属のようですが、骨自体の数値を知りたいですね」と是認する。

この研究チームによるもう1編の論文は、発掘現場の気候や環境に関するもので、それによれば、約280万年前に気候が変化し、アファール地方の森林が草原に変わったという2。「そのときの身の振り方は2通りありました。1つは絶滅すること、もう1つは何らかの進化的適応を行うことです」とVillmoareは言う(彼はこの論文には名を連ねていない)。彼の推測によれば、ホモ・サピエンスの祖先は獲物を捕らえることを選び、最終的に脳が大型化して体が敏捷になったのではないかという。

複雑な歴史

オルドバイ峡谷で出土した骨に基づいて復元されたホモ・ハビリスの頭蓋。 | 拡大する

Philipp Gunz, Simon Neubauer and Fred Spoor

Villmoareらの論文が掲載されたのと同じ日、Natureには、ホモ・ハビリスを再定義する論文が掲載された3。180万年前の化石標本が再分析されたのだ。

1960年代前半、古人類学者のLouis LeakeyとMary Leakeyを中心とする研究チームは、変形した下顎、手、そして頭蓋断片をタンザニアのオルドバイ峡谷で発見した。「とても簡素な形式でNatureに報告されました4。『前略、骨を見つけたので写真をご覧に入れます。草々』のような感じだったのです」とロンドン大学ユニバーシティカレッジの古人類学者Fred Spoorは語る。Leakeyらは後に、その骨を新種としてホモ・ハビリス(「器用な人」の意)と命名した5。さらに、その数年前に近くで発見されていた石器はホモ・ハビリスたちが作ったのだと主張した。

しかし、その標本は極めて貧弱だったため、その後は他のあらゆる種類の化石がホモ・ハビリスとされた。

「ホモ・ハビリスという混乱状態への取り組みが、古人類学者としての私の始まりです。たった1種に詰め込むには多様性があり過ぎることが極めて明瞭になったのです」とLiebermanは言う。

その混乱状態を解消する一助として、Spoorの研究チームはLeakeyの最初のホモ・ハビリス化石に立ち返り、その下顎骨の本当の形を明らかにした。コンピューター断層撮影法(CT)のスキャナーを利用して下顎骨の3次元モデルを作成した結果、この化石は無数の小さな破損により変形していたことが分かったのだ。

下顎骨の破片を復元すると、予想以上に原始的な顎の外観が姿を現した。その形は細長く、両側の歯列がほぼ平行になっており、丸くなった人類の顎よりもアウストラロピテクスに近かった。一方、復元された頭蓋骨からは、脳容積が予想より多く、ホモ・エレクトスと同等であったことが示された。

Spoorらによれば、彼らが新たに復元したLeakeyのホモ・ハビリス化石の顎と、過去に発見されホモ・ハビリスとして分類された上顎化石(230万年前のものとされている)は、外観上あまりにも異なっており、同一種とすることはできないという。このことから、ホモ・エレクトス以前のヒト属は多様な種で構成されていたことが示唆される。

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Liebermanによれば、今回の2編の論文から、「初期ヒト属」種には多様性が多いが、ホモ・エレクトスの明らかな祖先として突出したものではないことが明確になったという。「誰もが、初期ヒト属誕生までの過渡期と、(出現した)初期ヒト属の中で何が起こったのか、ということを知りたがっているのです。今後どのような展開になるのか誰にも分かりません」とLiebermanは話す。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. Villmoare, B. et al. Science 347, 1352-1355 (2015).
  2. DiMaggio, E. N. et al. Science 347, 1355-1359 (2015).
  3. Spoor, F. et al. Nature 519, 83–86 (2015).
  4. Leakey, L. Nature 189, 649–650 (1961).
  5. Leakey, L. S. B., Tobias, P. V. & Napier, J. R. Nature 202, 7–9 (1964).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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