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とっておき年間画像特集2014
アイスランドでは2014年夏に噴煙が空を覆い、夜明けや夕暮れどきの空を血のような赤色に染めた。このバンダルブンガ火山の噴火活動では、山のそばのホルフロイン溶岩原の割れ目から数千tもの二酸化硫黄が毎日噴出し、2010年のエイヤフィヤトラ氷河噴火のような大規模な火山灰放出を予想していた科学者らを驚かせた。
RAGNAR TH. SIGURDSSON/ARCTIC-IMAGES.COM
木星の衛星エウロパを実際に人間の目で見たら、きっとこんな姿だろう。NASAは、1990年代後半に探査機ガリレオによって撮影された一連の画像を再処理して色を調整し、氷に覆われたこの衛星のリアルな高解像度画像を作成した。
EUROPA: NASA/JPL-CALTECH/SETI INST.
触手をくるくると巻いたタコの姿が初めて捉えられた。特徴的な耳から「ダンボ・タコ」と呼ばれるこの生き物は、ジュウモンジダコ属(Grimpoteuthis)の仲間だ。2014年4月、米国調査船「Okeanos Explorer」がメキシコ湾で投下した遠隔操作型の潜水調査艇が深度約2000mまで潜航した際に、この画像が撮影された。
DUMBO: NOAA/CC BY SA 2.0
欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機ロゼッタは2014年11月、世界の人々が見守る中、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星表面に向けて着陸機フィラエを降下させた。フィラエは、難しい着陸に挑む前に、彗星に近づく自身の姿を捉えた画像を送ってきた。このときフィラエと彗星は、共に時速5万km以上で宇宙空間内を移動中だった。
PHILAE: ESA/ROSETTA/PHILAE/CIVA
ダイバーが、1万2000年前のティーンエージャーの頭骨を回転盤の上に置いて三次元スキャン像を撮っているところ。この頭骨は、メキシコのユカタン半島にある海中洞窟の内部深くで見つかった、古代人骨群の一部である。これらの人骨は、人類が南北アメリカ大陸にどのように広がったかを知るための手掛かりとなるが、移動が難しい。そのため、潜ってこの場で分析しなければならないのだ。
SKULL: PAUL NICKLEN/NATL GEOGRAPHIC
こちらをじっと見ているのはハエトリグモ類のPhidippus audaxの目だ。2014年のニコン顕微鏡写真コンテスト「Small World」で3位となった、米国コネチカット州グリーンウィッチのNoah Fram-Schwartzの作品。
SPIDER: NOAH FRAM-SCHWARTZ/COURTESY OF NIKON SMALL WORLD
組織を透明にできるなら、体のスキャン画像を撮る必要はなくなるかもしれない。日本の理化学研究所(埼玉県和光市)と東京大学の研究チームが、化学物質カクテルとコンピューター画像化法を使ってマウスを透明化する方法を編み出した。近年、解剖せずに臓器の様子を明らかにする手法が次々と登場している。
SEE-THROUGH MOUSE: COURTESY OF RIKEN
日本のアーティスト東信は、さまざまな植物を宇宙空間へ送り出す彼の「Exobiotanica」プロジェクトの成果として、この盆栽をはじめとする一連の美しい写真を紹介している。だが、彼が盆栽を気球で大気圏上層にまで上昇させた理由は定かではない。
BONSAI: AMKK/EXOBIOTANICA
この液滴は、ピコリットルサイズの微小なシリコーンオイルである。オランダのトゥウェンテ大学の研究チームは、8ナノ秒の長さのレーザーパルスで滴を照らして、600ナノ秒間隔で撮影することで、落下液滴が生成する様子を捉えた。
DROPLETS: MARK-JAN VAN DER MEULEN & ARJAN VAN DER BOS
ブラジルのエマス国立公園で夜の風景に浮かぶ妖しい緑色の光は、シロアリ塚に棲む甲虫ヒカリコメツキの幼虫や飛翔するその成虫が発したものだ。写真家Ary Bassousが長時間露光で撮影したこの写真は、ロンドン自然史博物館とBBC Worldwideが主催する2014年の写真コンテスト「Wildlife Photographer of the Year」の無脊椎動物部門で優勝した。
BEETLE LARVAE: ARY BASSOUS/WILDLIFE PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2014.
翻訳:船田晶子
Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 2
DOI: 10.1038/ndigest.2015.150222