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サルが常用する薬

サルが鼻風邪をひいたり頭痛になったりしても、薬棚から解熱鎮痛剤を取り出して飲むぜいたくはできない。野生の世界でサルたちは風邪や咳をどのように治しているのだろうか。

ジョージア大学(米国アトランタ)の生態学者Ria R. Ghaiらは、ウガンダのキバレ国立公園でアカコロブス(サルの一種)の100頭以上の集団を4年間観察し、雨林が解熱鎮痛剤の代わりになるものを提供しているかどうかを調べた。

この結果、鞭虫が感染したサルは休んでいる時間が長く、動いたり毛づくろいしたり交尾したりする時間が短いことが分かった。また食事の時間や回数は同じなのに、感染サルは健康なサルに比べて樹皮を食べる量が2倍に達することも明らかになった。この成果は、2014年9月にProceedings of the Royal Society Bに報告された。

樹皮を食べると、その繊維質がサルの消化管から寄生虫を文字どおり掃き出してくれるのかもしれないが、Ghaiはもっと説得力のある理由を考えている。病気のサルが好んで食べた9種の樹木・低木のうち7種は、滅菌や鎮痛などの薬理効果があることが知られているものだった。つまり、サルは自分で治療している可能性がある。他の可能性も否定できないものの、病気になったサルは地元の人々が寄生虫感染などの病気になったときに使うのとまさに同じ植物を使っていた。「単なる偶然とは思えません」とGhaiは言う。

アリさんの消毒薬

ヘルシンキ大学(フィンランド)の研究者たちが最近、アリが自分で病気を治療していることを示す初の証拠を発表した。数百匹のヤマアリ(Formica fusca)を危険な真菌に曝さらしたところ、真菌が感染したアリの多くは普通の水よりも実験者が用意した濃度4 〜6%の過酸化水素水に浸かることを選んだ。健康なアリはこの家庭用薬品を避けた。過酸化水素水は少量で殺菌効果があるが、高濃度だとアリにも致命的だ。過酸化水素水を浴びた感染アリは真菌に屈して死ぬ率が低くなった。自然環境では、アリたちは過酸化水素を放出する植物を食べることによってアリマキ(アブラムシ)にたかられるのを避けているとみられる。

翻訳:粟木瑞穂

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 12

DOI: 10.1038/ndigest.2015.151208a