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世界最短波長の原子準位X線レーザー

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2015.151131

原文:Nature (2015-08-27) | doi: 10.1038/524424a | Photonics: A stable narrow-band X-ray laser

Linda Young

これまでで最も波長の短い原子準位レーザーが、X線自由電子レーザー施設「SACLA」(兵庫県佐用町)を使って開発された。このレーザーは、わずかに異なる光子エネルギーに調節された2つのX線パルスを銅箔に照射するもので、これによって、波長スペクトルの幅が非常に狭いX線レーザー発振が実現した。この成果は、非常に安定したX線レーザーの実現につながる可能性がある。

X線は、物質内部に容易に入り込み、元素の違いや化学的性質、磁気的性質の空間的変化から生じるコントラストを使って内部の三次元構造像を作り出すことができる。硬X線波長で動作するコヒーレンス(可干渉性)の高いレーザーが実現すれば、このような静的な構造決定以上のことが可能になり、物質の状態を極めて短い時間スケールで、原子レベルで探ることができる。例えば、化学結合の形成・変化、電荷移行、光誘起超伝導などの動的プロセスの観測や、生体などの高分子構造を損傷せずに決定することができる。X線レーザーは、1960年に物理学者Theodore Maimanが可視光波長で発振する最初のレーザーを開発して以来1、非常に有用なものとして待ち望まれてきた。今回、電気通信大学レーザー新世代研究センター(東京都調布市)の米田仁紀らは、これまでの典型的なX線自由電子レーザーと比較して、波長が安定し、コヒーレンスが著しく改善した原子準位X線レーザーを実現し、Nature 2015年8月27日号446ページに報告した2。今回の成果は、パルス持続時間にわたって時間方向(光の伝播方向)にも干渉性が保たれている、つまり、時間的コヒーレンスを持つオングストローム波長レーザーへの大きな一歩だ。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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