Editorial

どのように科学を教えればよいのか

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2015.151035

原文:Nature (2015-07-16) | doi: 10.1038/523256a | An education

Nature 2015年7月16日号では、科学教育のあり方を特集し、教育方法の改革が必須である理由を掘り下げている。

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人々が好んで議論するテーマの1つが子どもの「正しい」育て方だが、僅差でそれに次ぐのが「最良の教育法」だ。そして多くの人々は、自分自身の経験と数世紀にわたる伝統を思い起こして、分かり切った答えを導き出す。つまり、最良の教育には、教師と教科書により練られた学習内容と学習計画が必要であり、学生はそれに従い知識を習得できるまで教科書を読んで練習問題を解き続ける必要があり、戦略的なタイミングで試験を実施して学生の成績を明らかにする必要がある、というものだ。

ところが、学習に関する過去数十年間にわたる科学的研究によれば、これらの方法のいずれにも特段の有効性が認められていない。例えば、大学レベルの科学の講座を受講する学生が、教授の講義を受動的に聴き、知識を詰め込んで試験を受ければ、確かに良い成績がとれる。しかし、このやり方で入力された知識は急速に忘れられてしまい、受講前の学生が抱いていた誤解を変える上で何の役にも立たない可能性があるのだ。

ここでは、「冬は地球と太陽との距離が長くなるから気温が下がる」という一般的な誤解を例にとって考えてみる。地球の自転軸が傾いているから四季が生じる、というのが正しい答えなのだが、講義を中心とした標準的な方法では、学生にこの答えを暗記させて誤解をなくすことしか期待できない。これに対して、過去の数百の実験的研究では、学生の考え方に対して疑問を投げかけ、その解決に積極的に取り組ませる(例えば、北半球と南半球の季節が正反対になる理由を説明させる)ことで、そうした事実の理解と知識の保持が相当に進むことが明らかになっている。学生は、最初は誤った答えを出すかもしれないが、その答えを得るためには何が重要な要因なのかをじっくりと考えなければならない。そのため、学生が正しい説明を聞く頃には、正しい答えに意味を与える骨組みが頭の中に出来上がっているのだ。

Nature 2015年7月16日号の特集はScientific Americanとの共同制作によるもので、こうした「能動学習」法の実践をいろいろな方法で試みている世界中の教育者について詳しく取り上げている(同271ページ参照)。能動学習を実践することで、大きな恩恵が得られると期待される。STEM(科学、技術、工学、数学)分野においては、専攻する学生が退屈極まりない丸暗記から解放されてドロップアウトが減り、学位を取得する有望な学生が増えることにつながる。非STEM系の分野においては、証拠に基づく調査、実験、推論を直接経験する学生の数が増えるというわけだ。

そうした改革を実行するのは容易なことではないし、その必要性に疑問を唱える大学教官も多くいるかもしれない。講義を中心とした教育は、数百年にわたって成功してきているのは確かであり、それによって大学教官という職務が繁栄してきたと言ってもほぼ間違いはない。

それでも改革は必須だ。これまでの伝統を踏襲する標準的な教育方法では、あまりに多くの学生が学業の継続を断念しており、有望な学生を増やすことができずにいる。手よりも頭を使って仕事をする人の方が多い現代にあって、目標達成者が少なすぎる劣悪な学習システムを世界規模で維持していく余裕はないのだ。

(翻訳:菊川要)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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