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世界初、4本の足を持つヘビの化石を発見

「4本足の抱きつきヘビ」こと、テトラポドフィス・アンプレクトゥス(Tetrapodophis amplectus)の化石。足はあるが、明らかにヘビだった。 Credit: Dave Martill, University of Portsmouth

このほど、4本足のヘビ「テトラポドフィス・アンプレクトゥス」(Tetrapodophis amplectus)の化石が世界で初めて発見され、科学者たちはヘビがトカゲから進化してきた過程について再考を迫られている。

Science 2015年7月24日号に発表された論文1の著者の1人であるバース大学(英国)の古生物学者Nick Longrichは、テトラポドフィスには4本の足があるが、それ以外の特徴は、この動物が明らかにヘビであることを示していると言う。

研究者たちは、テトラポドフィスの四肢は移動には使用されず、獲物をつかんだり、交尾相手にしがみついたりするのに使われたと推測している。そこから、「4本足の抱きつきヘビ」という意味の学名が付くことになった。

実は、この化石はブラジル北東部のクラト層という化石を多く含む地層で数十年前に発見されたものである。ただ、小さな足は一見しただけでは判別しづらかったため、ありふれた化石として個人のコレクションの中で眠り続けていた。

ポーツマス大学(英国)の古生物学者で共著者の1人でもあるDavid Martillは、2012年に学生を引率して訪れたドイツの博物館でこの化石を見かけたとき、足はあったものの「ヘビではなかろうかと思いました。その後、顕微鏡でこの標本を詳細に観察していくうちに、推測は確信へと変わりました」と言う。確かにゆるくカーブして先端が尖った歯や、平坦でなく筒型の尾、腹部全体を覆う鱗など、この化石にはヘビの特徴が数多く備わっていた。「私たちは鳥と恐竜をつなぐミッシングリンクである始祖鳥Archaeopteryxを見に行って、ヘビとトカゲをつなぐミッシングリンクであるテトラポドフィスを発見したのです」とMartillは語る。

足を使って獲物を捕まえるテトラポドフィスの想像図。 Credit: Julius T. Cstonyi

胴が伸び、足を失う

ヘビが陸生動物から進化してきたのか、海生動物から進化してきたのかについては、科学者たちの間で今でも論争がある。テトラポドフィスには、海洋生活に適応した特徴(泳ぐのに適した尾など)は見られず、その頭骨と各部の比率は、地中生活への適応と矛盾しない。Longrichは、今回の発見は、ヘビが南半球で陸生動物から進化したことを明確に示していると主張している。

この化石のもう1つの大きな特徴は、各部の比率だ。テトラポドフィスには272個の椎骨があり、そのうちの160個が胴部、112個が尾部にある。これまでは、ヘビの祖先の胴部が伸び、椎骨の数が限界を超えたところで四肢が失われ始めたという説が有力であったが、胴部の160個という数字は、この説をもとに予測されていた限界の2倍以上なのである。

フロリダ大学(米国ゲインズビル)の進化発生生物学者Martin Cohnは、テトラポドフィスの四肢は、胴が長くなるにつれ単に縮小したのではなく、それまでとは別の目的に用いられるように進化した可能性があると主張する。このような見方は、ヘビの進化に関する一部の仮定と相容れない。Cohnが言うように、胴が伸びたことで四肢が失われたというパラダイムは修正を迫られているのだ。「この化石は、(胴の伸長と四肢の消失という)2つのプロセスが切り離せることを示しています」。

Cohnによると、2015年はヘビの進化の研究者にとって非常に重要な年になった。1月には、約1億6000万年前のジュラ紀中期のヘビの化石が発見され、最古のヘビの記録が7000万年前もさかのぼっているのだ2。テトラポドフィスは最古のヘビではないが、「発生生物学の観点からは、これまでに発見された化石の中で最も重要なものの1つでしょう。ヘビのような胴部と完全な前肢と後肢の組み合わせは、ヘビ版の始祖鳥と言えるものです」とCohnは語る。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 10

DOI: 10.1038/ndigest.2015.151003

原文

Four-legged fossil snake is a world first
  • Nature (2015-07-23) | DOI: 10.1038/nature.2015.18050
  • Anastasia Christakou
  • ※編集部註:2015年8月、ブラジル当局はこの化石が違法に国外に持ち出された可能性について捜査を開始した。ブラジルでは1942年に、無許可での化石の売買および国外持ち出しを禁じる法律を定めている。

参考文献

  1. Martill, D. M., Tischilinger, H. & Longrich, N. R. Science 349, 416–419(2015).
  2. Cakdwell, M. W., Nydam, R. L., Palci, A. & Apesteguia, S. Nature Commun. 6, 5996(2015).