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曲げられるスマホに一歩前進

THINKSTOCK

近頃iPhone 6を購入した人の一部は、この新製品が少々たわんでしまうのに気付いて愕然とした。これに対しアップル社は、この問題は非常にまれであって、同社製品は高い耐久性基準を満たしていると表明した。だが一部のハイテク企業はたわむ電子装置を求めている。ただし、意図的に曲げることができるものを。

材料科学者は長年、曲げたり丸めたりできる部品を目指して研究してきた。ソウル大学校(韓国)のチームは2014年9月にAPL Materialsに発表した論文で、ひびの入りやすい表示スクリーンに代わる可能性を秘めた柔軟なLED(発光ダイオード)ディスプレーを報告した。

グラフェン上に青色LED

研究チームはまず、グラフェンの極薄メッシュの上に発光材料である窒化ガリウム細線のカーペットを成長させた。グラフェンは炭素原子が一層に並んだシートで、柔軟で導電性があり、丈夫だ。次に、土台として使った銅の基板からこのグラフェンとLEDのシートを剝がし、柔軟なポリマーの上に置いた。これが曲げやすい表示スクリーンの出発点となる。

今日のほとんどの液晶ディスプレーに内蔵されている青色LED(発明者にはノーベル物理学賞が授与された)は、エネルギー効率と明るさに優れた窒化ガリウムを使っている。だが、柔軟な表面上にこの結晶を成長させるのは困難だった。

韓国チームの新しいLEDは曲げ伸ばしを1000回繰り返しても途切れなく発光でき、品質と柔軟性を両立しているようだ。これら個々のシートを組み合わせて完全なディスプレーを作ることができたら、曲がるスマートフォンが実現するかもしれない。もちろん、勝手にたわむのではなく、曲げられるように設計されたスマホだ。

翻訳:鐘田和彦

Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 1

DOI: 10.1038/ndigest.2015.150106a